投稿者:どろ 日 付:2006.7.26
スパイクさん、こんにちは。本日のニュース解説に関連して、自衛隊専門紙「朝雲」のコラムを思い出しました。(以下引用)
朝雲寸言2006/7/20付
戦争を止めさせるには、制裁、報復といった心理的、物理的強制か、または利益誘導という手段がある。北朝鮮をめぐって国際社会はここ数年、制裁か利益誘導かで議論してきた。今回の国連安保理決議は、「次は制裁」という一種の脅しを含んだ強い警告となったが、北朝鮮は、直ちにその受け入れを拒否した。 まして、「戦争」が長い歴史的怨念に基づくものであれば、多少の脅しや利益誘導で片づくものではない。小泉総理が中東訪問時に示した「平和と繁栄の回廊」構想は、日本を仲介に当事者の話し合いによる和平と経済復興の道筋を探る「利益誘導」型の和平プランだ。
だが、総理がイスラエルを訪問している最中に、同国によるレバノンへの攻撃が始まった。これを日本外交の甘さとか失敗というのはたやすいが、戦いであれ和平であれ、成功するには理性とタイミングが要る。タイミングが悪くとも、和平を訴え続けることは無駄ではない。
サミットでも、世界のリーダーがこぞって中東、北朝鮮への懸念と自制を訴えた。だが、理性はしょせん、局外者の理性であって、怨念に凝り固まった当事者には通じない。「義理がすたればこの世は闇」というが、理性が沈黙すれば世界が闇となる。 理性の声は明白だ。ミサイルによって利益は受られない、テロが勝利することはない、そして、テロに「戦争」をもってこたえるだけではテロはなくせない。(引用終わり)
>理性が沈黙すれば世界が闇となる。 >理性の声は明白だ。ミサイルによって利益は受られない、テロが勝利することはない。 >そして、テロに「戦争」をもってこたえるだけではテロはなくせない。
まことにそのとおりだと思います。
先日竹島で韓国が海洋調査を行ったときも「朝雲」はこう書いていました。(以下引用)
(海洋調査を行う)韓国の調査船「ヘヤン」2500トンに対して、海上保安庁は3000トンの巡視船「大山」を出して牽制する。
韓国海洋警察は、4月のように多数の警備艦を派遣せず、1〜2隻の警備艦を随伴させると見られている。 日韓のコースト・ガードは、互いに事態を紛糾させないよう細心の注意を払おうとしている。どちらも力づくの紛争にはしたくないのだ。
実力組織は「政治の道具」でありつつも、政治の行き過ぎに巻き込まれまいとする。
片や政治家は海を挟んで声高に相手を非難し、現場はリスクを背負って苦労する。
“勇ましい政治”が紛争の解決に役立たないことは歴史が教えている。(引用おわり)
自衛隊の中で語られているジョークですが、「自衛隊は日本最大の反戦団体だ」というのがあります。自衛隊の最大の存在意義は「抑止力」、戦争を未然に防ぐのが自衛隊の役割だから、という意味です。 しっかり防備を固めることで相手国に侵略意図を起こさせないこと。 武力行使を必要としない環境づくりが自衛隊の任務だと。 現帝京大学教授で元陸上自衛隊北部方面総監の志方俊之元陸将はこう語ります。 「武力を使わねばならなくなった時点で、自衛隊の任務は半分失敗したようなもの。」
その主張の当否はともかく、自衛隊ですらこのように戦争を避けることを第一義的に追及しているのならば、ましてや政治の側はお互いに緊張を緩和し、相互理解を進め、敵愾心をあおらないようにするのが一番の役割に違いありません。
このところ、その役割が逆転しているんではなかろうか。 「軍人」の方がよほど冷静で理性的であるように見えるのは、戦争というものをリアルに見つめているからでしょうか。 「敵地攻撃論」などの勇ましい意見には、リアリティが根底的に欠如していますからね。 軍事を知らず、戦争を知らず、よってその恐ろしさを深く考えもせず、尚かつあろうことか情報操作まがいのことをしてまで対立をアジテートする政治は、とても危険だと思います。
一般的には軍人よりも政治家が開戦を決める場合が多いですね。例外もあり、湾岸戦争でのパウエル統合参謀本部議長が早急に停戦を主張したために、イラクの自由作戦が誘発されるようなケースもあります。これは変則的な事例だと思いますね。
額賀擁立は、自民党内にテポドン脅威論で総裁戦に勝てるという近視眼的な考えがあり、近隣諸国の反応をまったく考慮していないことの証拠だと思います。自衛官には訓練に励んでもらい、面倒なことは政治が一切を引き受けるという態度が必要です。青年将校風の青臭くて先鋭的な国防論ばかり聞こえてくるのは困ったことです。誰かこれにパラダイム・シフトを起こすような政治家はいないのでしょうか?
額賀氏の擁立はまず間違いなく失敗します。中国や韓国の反発だけでなく、日米安保条約の枠組みを超えた敵地攻撃論をアメリカが認めるはずがないからです。(スパイク)
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