この本は、太平洋戦争中に行われたフィリピンのオードネル捕虜収容所の捕虜救出作戦に関するドキュメンタリー本です。オードネル捕虜収容所には連合軍兵士513人が捕らえられていました。収容所は劣悪な状況で、命を落とす兵士が続出していました。脱走した捕虜の証言を元に米陸軍第6レンジャー大隊121人が救出作戦を計画し、ほぼ全員を救出することに成功するまでの物語です。
ハプトン・サイズは元捕虜とレンジャー隊員、元日本兵に対してインタビューを行い、非常にフェアな記述を心がけています。フィリピンの日本軍といえば、バターン死の行進で捕虜を大量に死なせたことが有名です。しかし、サイズは報復心から日本軍の残虐さを誇張するのではなく、事実に基づいて書いています。戦後、戦犯として処刑された本間雅晴中将についても、海外事情に通じた文人派の将軍として説明し、彼は捕虜が移動中に死んでいることを知らなかったと明確に書いています。しかし、フィリピンの捕虜収容所の環境が劣悪だったのは否定することができず、凄惨な描写は避けられません。栄養失調で死んでいく兵士、日本軍兵士の暴力で死んでいく兵士など、日本人としては冷静に読みにくいことも数多く書かれています。しかし、これらは事実なのです。事実を書くことを批判の材料にはできません。ストーリーは、捕虜とレンジャー部隊の行動を交互に行き来します。捕虜とレンジャー隊員が対面した時の描写は感動的です。
映画の救出作戦と違い、奇襲と戦力の優位性を常に保つのがポイントだということが、本書には書かれています。作戦が実行されるまでには付近の日本軍が退却し、収容所は実質的に捕虜の自己管理下にあったことが、作戦の成功を助けました。警備兵を一瞬で全滅させ、捕虜を素早く出発させることができたからです。現地のゲリラに退却を支援してもらい、追撃してきた日本軍を橋で殲滅できたのが、犠牲を最小限に抑えられた理由でした。結局のところ、戦争は敵よりも戦力で常に優位に立ち、敵を虐殺することでしかないのです。そのことが本書を読むと、よく分かります。(2007.3.2)