新版 国際人道法 再増補
 ジュネーブ法などの戦争に関係する法律を勉強するにも、いきなり条文にあたるのは無茶です。全体を解説した本でまとまった内容のものというと、この本が適当です。戦争に関する国際法は、端的に「戦争法」と呼ばれます。しかし、赤十字組織だけはそれらを「国際人道法」と呼んでおり、本書でもこの呼び名を用いています。

 テレビの政治番組を見ていると、とかく国際法を無視した発言が目立ちます。学校でも教えているはずですが、法の優先順序は、第一が憲法、第二が条約、国内法はその下に位置します。日本がジュネーブ条約をすべて批准し、その他の国際条約を調印している以上、日々の生活の中にそれが生かされてこないと本当ではありません。しかし、実際にはほとんど反映されておらず、テレビはそれを国民に徹底して教え込んでいます。この点で、日本の政治は遙かに未発達と考えざるを得ません。

 本書は国際人道法の概念を網羅するだけでなく、最近の国際紛争において国際人道法がどのように適用されてきたかも説明しています。本書を読んでから、ジュネーブ法を全部読めば、国際人道法は理解できます。他にも類似する本はありますが、本書ほどまとまったものはありません。

 第二次世界大戦では、日本は国際法に関してかなりの煮え湯を飲みました。同じ失敗を繰り返すべきではないのに、国際法を無視するのが当たり前になったアメリカを支持し、間接的に誤りを繰り返しています。少しでも多くの人に国際法の分野に対する関心を持ってもらいたいと思います。 (2006.9.29)

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