兵器の解説書は当たり外れが多いのですが、この本は坂本明氏のイラストと的確な解説文で成功している本だと言えます。
最新式の陸上戦闘装備やその戦術が分かりやすいイラストや文章で説明されており、その内容が「そこが知りたい」というものなので、資料として大変に重宝です。本によってはデータが並んでいるだけで使い道がない場合があるのですが、本書は忘れてしまったデータを思い出すのに使えます。ヘリコプター、装甲戦闘車両、対戦車兵器、戦闘工兵、火砲、ロケット兵器、無人偵察機(UAV)、対空兵器、電子戦、戦場医療など、多岐にわたる分野が解説されていて、それぞれが簡潔でありながら、中途半端に終わっていないところが評価できます。扱っている兵器の多くはTacOpsにも登場するので、参考書としても使えます。
兵器の構造はそれぞれの違いが分かるように書かれており、混乱することは少ないでしょう。イラストと文章を著者一人が書いているためか、図と文の整合性が高いところも評価できます。構造だけでなく使い方や戦術も解説しているところも便利です。直接射撃や間接砲撃の方法も詳しく書いてあります。どこを取りあげるかということについて、著者は非常によいセンスをお持ちのようです。でも、軍用マニュアルが本書のような内容とは思わないでください。本物のマニュアルはもっと量が多いのが普通で、本書は最も基本的な部分を抜粋し、読みやすく編集したものです。
本書がメカへの関心で書かれているためか、軍事にある程度精通している人でなければ、これらの兵器が実戦でどのように使われるのかを具体的にイメージするのはむずかしいかも知れません。個々の兵器についての解説書であるため、兵器が集合体として運用されるということが分かりにくいのは、この種の本が避けがたい欠点かも知れません。その辺を考慮しながら活用して欲しいと思います。つまり、本の内容を頭に入れて、それがどのように運用されるのかまでイメージできて、はじめて読む意味があるのです。
この「グラフィック・アクション・シリーズ」は他にも潜水艦や空母など、テーマ別に何冊もあるので、用途に応じて購入するとよいでしょう。私は全冊は読んでいませんが、本書と同様にうまくまとまっているはずです。(2007.1.1)