民間軍事企業に関する本と言えば、まず、この本があげられます。戦争を企業が行うという信じがたい現実が目の前にあります。もともと、海外には軍隊に近い警備会社はありましたが、民間軍事企業はそれをさらに超えた活動を行っており、戦争に直接参加しています。あるいは、兵士の訓練や補給などの後方支援を担うようになっています。イラク・アフガニスタン戦は民間軍事企業の大きな市場となっています。
もとは、ヨーロッパで興った傭兵制度ですが、その後姿を消し、第二次世界大戦後のアフリカに再び現れました。しかし、この二つの傭兵と民間軍事企業は規模も性質もまるで違っていると著者は指摘しています。ヨーロッパの傭兵は八百長のような戦争をやって国王から金をもらっていました。アフリカの傭兵は指揮官を除くとならず者のような集団です。それに比べると、民間軍事企業は高度な訓練を受けた元兵士ばかり採用します。そのため、戦争に果たす役割が非常に大きいのです。
アメリカでは刑務所の運営を民間企業が行ったり、かなりの民営化が進んでいます。しかし、戦争の場合、ジュネーブ法上、民間軍事企業の社員は戦闘員とみなすことができません。そのため、捕虜になった場合、どういう扱いになるのかも分かっていません。イラクのファルージャでの戦闘に、民間軍事企業の社員が関わっていたように、すでに彼らは戦争の多くの場面に参加しているのです。いずれ、彼らの行動を規制するよう、ジュネーブ法は改正されるべきでしょう。
日本は平和主義を掲げているのだから、こうした立法活動に大いに協力すべきだと思うのですが、そういう声を政治家から聞いたことはありません。こうした分野に興味を持って欲しいので、この本を薦めます。(2006.8.26)