第二次世界大戦—あんな話こんな話
 お正月休みなどに読むのにちょうどよい本をご紹介します。このサイトの内容は、軍事問題に興味のない方には読みにくいかも知れません。そこで、戦史からゴシップ風の話題ばかりを集めた本書で、軍事問題に親しみを持ってもらいたいと思います。著者はウォーゲームの製作で有名なジェームズ・F・ダニガン、アルバート・A・ノーフィのふたりです。

 第2次世界大戦中の面白くて、ためになる話がたくさん詰まっています。中には信憑性が疑わしいものもありますが、娯楽性を重視した本としては許容できる範囲でしょう。大西洋上で不運にもドイツの潜水艦と衝突して沈んだアメリカの艦船の名前のようなカルト的な知識が豊富に載っています。

 日本軍に関する話もあります。日本の士官候補生は劣悪な食事で厳しい訓練をするために身体が育たず、在学中に身長は1.2cm、体重は1.3kgしか増えなかったといいます。このため、将校の平均身長は165cm、平均体重58kgと、他国と比べるとあまりにも貧弱でした。また、米軍は日本軍の便所の数を基に兵員数を推測していたという話もあります。日本軍が兵士何人につき便所を一つ造るかが分かっていたので、便所の数は大変に有用な情報だったのです。

 この本には興味深い数字がたくさん書かれています。たとえば、ヨーロッパ戦線だけで米軍の軍事裁判で死刑判決を受けた者は443人もいましたが、多くの者が後に減刑され、本当に処刑されたのは70人でした。同じヨーロッパ戦線で米第8空軍の戦闘機と爆撃機が発射した弾の数と撃墜した敵機を比べると、1機を撃墜するのに12,700発も使っていました。有名なドイツ軍の88mm高射砲も敵機1機を撃墜するのに12,000発も使っていました。

 私が一番笑えたのは、ジョージ・パットン大将の話です。戦闘恐怖症の兵士を手袋でひっぱたいたことで有名なパットン大将ですが、本書は彼自身が軽度のPTSDであった可能性を指摘しています。米軍は戦闘ストレスについての考え方が遅れており、戦死者の7分の1は精神障害が原因で、連合国軍中で最も悪い数字だったといいます。ところで、兵士を殴り倒してもむしろ褒められ、救援の見込みがない戦場で死ぬまで戦うことを強要した日本軍の精神障害者の数はどれくらいだったのでしょうか。あまり話題になることはありませんが、希に戦争で心を病んだ兵士の話を聞きます。精神医学的な調査報告がないのかが気になります。

 このように、楽しめる内容とはいえ、そこから興味を膨らますことができるのが、この本のよいところです。(2006.12.29)

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