北朝鮮が米本土を攻撃する方法とは?

2006.7.8

 湾岸紛争の折、日本のメディアはイラクがトンネル型の空軍基地を造り、その中に戦闘機を温存しているという話をまことしやかに報じました。実際に、こんな秘密基地が役に立つわけはなく、発見され次第、トンネルの出口を空爆され、格納している戦闘機と一緒に葬られてしまうでしょう。なぜ日本のマスコミがこういう秘密基地の話が好きなのか分かりませんが、アメリカの研究家はもっとすごい秘密兵器を想定しています。globalsecurity.orgに掲載された秘密の運搬方法(このリンクの記事の下の方をご覧下さい)を日本のメディア、あるいはハリウッドの脚本家が取りあげてこなかったのはむしろ不思議です。

 テポドン2の発射に失敗した今、北朝鮮にはノドンBしか頼れる兵器がありません。このノドンBを使ったのが、その秘密兵器です。ノドンBの2,750〜4,000kmという射程からして、このミサイルが何を目的に開発されたのか疑問だといわれています。射程が本当に4,000kmなら、グアムの米軍基地を攻撃する能力を持っていることになります。この射程距離は、2004年7月7日に北朝鮮のチョ・ヨンキル国防大臣が、射程が2,750〜4,000kmの新型ミサイルを開発したと述べたことが根拠で、実際に飛んでいるのを確認されたわけではありません。1993年5月に射程1,300kmといわれるノドン1の発射実験が行われていますが、最大射程の半分にも満たない500km(今回の発射距離に近いことに注意)を飛んだだけでした。ノドンBと開発のベースになったSS-N-6はミサイルの直径が同じで、全長だけが異なります。ノドンBはSS-N-6よりも全長が2m強長く、その分だけ燃料タンクを大きくしたと考えられています。しかし、それだけで約1,000kmも射程距離を伸ばせるかについては疑問だといいます。5日の発射で、北朝鮮がノドンBを精々600kmしか飛ばさなかったのは本当に不思議です。燃料を節約して少ししか注入しなかった可能性を考えた方がよいのかも知れません。

 ノドンBがアメリカに脅威を及ぼすことがあるかを考えた時に、ある方法でノドンBを米本土に近づけられることに専門家たちは気がつきました。もちろん、ミサイル潜水艦を作るような能力は北朝鮮にはありません。しかし、ノドンBは貨物用のコンテナ(長さ12.192m)にすっぽりと収まる大きさです。ノドンBを仕込んだコンテナを貨物船に積んで出航すれば、誰にも気がつかれずに米本土に接近できるというわけです。位置に着いたら、コンテナの上部が開き、中からノドンBが起きあがり、垂直に発射される仕組みです。貨物船一隻についてノドン・ミサイル3〜5発を搭載できると見込まれています。

 論文の最下部には、この貨物船とノドンBのスケッチが掲載されています。画像を右クリックすると拡大してみることもできます。いかにもハリウッド好みの外観です。論文の最上右段にある地図を右クリックで拡大すると、この貨物船を使ってアメリカの48州を攻撃できる範囲が分かります。2,700kmと4,000kmの両方の射程に対応しています。

 この貨物船を作る計画が実在するわけではなく、推論によって生み出された船に過ぎません。しかし、現有の技術で可能なことなので、北朝鮮やイランが活用することを米政府は気にしているというわけです。ただ、ノドンBの性能自体に疑問がある以上、現実性は低いと考えてよいのではないでしょうか。

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