5日に放送されたテレビニュースの映像が見られるサイトを送ってくれた人がいました。メールの内容から投稿ではないようなので掲載しませんが、サイトのアドレスは紹介します。無許可で映像をアップロードしているサイトを載せることに問題はあるものの、当日の様子を振り返ることには意義があると考えます。これを見ると、当日の混乱ぶりが甦ってきます。また、初期の観測情報は精度が低いと誰も言わないため、確定的な事実と信じ込む危険をはらんでいたことも分かります。
http://www.youtube.com/watch?v=Og4kYG9iHvs
http://www.youtube.com/watch?v=fv99VcwP7vM
さて、どうやら国連安保理決議はうまく行きそうにありません。麻生太郎外務大臣が「決議案以外は無意味」と言うものの、中ロが反対している以上、決議採択はあり得ません。議長宣言あたりに落ち着く見込みです。それを承知で自爆覚悟の外交合戦を展開しているのが分かりません。日本の外交には、国益のために味方国を作るという発想が抜け落ちています。
そもそも、今回のミサイル事件は、ミサイルの落下地点すらはっきり公表されていません。これでは、日本国民も自国の経済制裁以外に国連での経済制裁も必要なのか判断できないというものです。北朝鮮は自国内には進入禁止区域を通告していました。こうした情報はラジオ放送で北朝鮮の国民に知らされるはずで、韓国は当然ながら事前に情報をつかんでいました。それを韓国国内に告知しなかったため、韓国政府は国内のマスコミから「韓国の船舶や航空機が危険にさらされる恐れがあった」と批判を浴びています。もし、ミサイルが北朝鮮の領海内に落下していたら、国連での経済制裁は難しいと誰もが考えるでしょう。日本として独自に経済制裁を行い、国連ではアピールする程度にとどめるのが常識的です。国連での日本の活動を支援したいと思う日本人も、これでは力が入り切りません。秘密主義が望ましい方向への進展を妨害しています。
北朝鮮のミサイルの性能を隠し、誇張した上で、「敵基地攻撃能力保有」を額賀福志郎防衛庁長官が言い出したのもやりすぎです。安倍晋三官房長官はこれが「先制攻撃論」ではないと述べていますが、そもそも「ミサイル発射基地攻撃」という言葉自体、表現が不正確です。スカッドもノドンも移動する車両から発射できます。移動するランチャーを探知して攻撃するのは、巡航ミサイルでも不可能です。事前に位置が分かっているミサイル基地しか攻撃できません。移動式ランチャーを攻撃するには、ミサイルを搭載した無人攻撃機プレデター「MQ-1」のような兵器を大量に北朝鮮の上空に飛ばし、虱潰しに探す必要があるでしょう。北朝鮮を攻撃するには、プレデターで実例があるかどうか知らないのですが、MQ-1を輸送機に大量に乗せ、日本海上空から発進させるような形になるかも知れません。ちょっと気になるのは、2007年から航空自衛隊が無人偵察機を導入する予定だということです。それと今回の発言が関係があるのかどうかが気になります。
いずれにせよ、この発言は失言でした。韓国が「敵基地攻撃」に強く反発しました。太陽政策の下で北朝鮮との和解を目指す韓国としては、日本に出てきてほしくないのは当然です。日本には韓国人の視点を理解する姿勢に欠けており、韓国と北朝鮮がもとは一つの国だったことを理解していません。北朝鮮のことを処理できるのは韓国をおいて他にないという自負が韓国人にはあります。去年、私が韓国に行った時も、北朝鮮が攻撃してくると思っている人は韓国にはいないように見えました。自衛のためとはいえ、日本が北朝鮮を攻撃すると言えば彼らが反対するのは容易に想像できます。それに、韓国は日本の政治を独特の目で見ます。横田めぐみさんの夫とされる金英南さんの母親と姉が、日本が拉致問題を政治問題化しようとしていると考えて日本のマスコミの取材を受けなくなったことは、このことをよく表しています。日本にはそのような政治的な動きはないのに、韓国から見るとそう思える。こんなことが日韓の間ではよく繰り返されています。日本と韓国のメディアを見比べると、まるで漫才のような丁々発止のやり取りに苦笑せざるを得ないことがしばしばです。北朝鮮のミサイル問題では、こうした事情をふまえた上で韓国と中国を味方につけなければなりません。安倍官房長官が韓国の反発に再反発するのを見ると失望せざるを得ませんでした。政治家には、思ったことを言うのではなく、戦略的に発言することを切に望みます。