米空母エンタープライズ、釜山寄港の理由

2006.7.13
14時修正

 11日に私はこう書きました。

 さらに、米海軍は多数の艦艇(イージス艦、ミサイル巡洋艦、空母)をこの地域に集結させる予定です。ただし、空母は最近小樽に寄港したキティ・ホークではなく、ペルシャ湾からエンタープライズを呼び戻すということです。

 12日に、エンタープライズ号とイージス駆逐艦・巡洋艦などが7月18日から3泊4日の日程で、韓国の釜山第3艦隊作戦基地に寄港すると、朝鮮日報が報じました。この基地は最近完成したばかりで、空母が停泊できる施設も設けられています。朝鮮日報は「これらの米航空母艦は北朝鮮のミサイル発射とは関係なく、既に立てられた計画に従ってインド洋に向かう途中、釜山に寄るものだと軍当局は伝えた。」と書いています。そこで、私が引用した文章の原文を見直したのですが、「エンタープライズがペルシャ湾からこの地域(極東)へ帰還した」と書いてあり、ミサイル対策のためと明確に書いているわけではないことが分かりました。しかし、現在かなりの米艦艇が日本海周辺に集結しつつあり、エンタープライズの帰還はそれらの説明の一番最後に書かれているので、関連性を含ませた表現になっています。

 「ペルシャ湾から戻った」のか「インド洋へ向かう途中」なのか、いずれなのかは記事からは判断できません。「ペルシャ湾」と「インド洋」は同じ場所を指していると受け取るべきでしょうが、行きと帰りは大幅に違います。帰りなら、寄港した後、日本海をうろうろしていても不思議に思われませんが、行く途中ならそうも行きません。

 こういう場合、CIAにいる友人に聞かなくても、実はインターネットを使って真相を調べられるのです。もちろん、エンタープライズの公式サイトにも釜山に行くとは書いてありません。しかし、このサイトには隊員のコラムが掲載されていて、それが手がかりになるのです。7月9日に掲載されたウィル・ボラールのコラム「A Day On The Beach」を要約します。

 エンタープライズはここ半年間、出動した状態になっており、最近1ヶ月以上はイラクの自由作戦、不朽の自由作戦の任務につき、千回以上のフライト・オペレーションを行いました。7月8日には、任務を休んで「スチール・ビーチ・ピクニック」を実施しました。要するに、甲板の上でパーティを開いたのです。普段は支給されないような美味しい食べ物とお酒が用意され、打ち放しのゴルフ練習場、Idol competition(美人もしくは女装大会?)、芸達者な隊員のショーなどが催されて、隊員は大いに息抜きを楽しみました。この8時間のパーティの間も、航空機は15分待機態勢で、すぐに発進できるようになっていました。

 というわけで、韓国軍の発表は事実と違います。意図的に目的を隠したのかも知れませんが、いまはインターネットの時代なのです。「頭隠して、尻隠さず」ということになってしまいます。

 ミサイルの観測に空母は大して役に立ちませんが、随伴しているイージス艦は使えますし、北朝鮮にある程度のプレッシャーを与えることができます。5日に小樽を出航したキティ・ホーク(現在位置は不明)と合わせれば攻撃力は絶大で、存在しているだけで畏怖を与えることができます。隊員の休養のため、北朝鮮への圧力のため、韓国が造った空母用の埠頭を実際に使用するためなど、複数の理由によるもので、特定の目的に絞り込んだものではないと考えられます。

(追記)

 記事を掲載した後で、エンタープライズが釜山港を出航してからインド洋へ向かう可能性を無視していたことに気がつきました。globalsecurityの情報がそれほど重要なものではなかった可能性もあります。しかし、「Monitoring Operations」という項に書いてあることなので、それなりの意味があるのかも知れません。今後、エンタープライズと随伴艦の動向に注意していこうと思います。

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