アメリカのワシントンにある「The Center for Defense Information」のサイトに興味深い記事を見つけました。まずは、その記事を引用します。
CDIの上級アドバイザー、フィリップ・E・コイル三世によれば、「マスコミは北朝鮮が何発ミサイルを打ち上げたのかで混乱していた。最初は3発で、それから4、5発、さらに6発になった。しかも、韓国当局者の言を引用した連合ニュースによれば、2基のテポドン2を含む全部で10基のミサイルが発射され、テポドンはどちらも失敗に終わった。ロシアの参謀本部は10発が発射され、あるデータのセットによればミサイルはICBMと思われ、別のデータのセットによると異なるクラスの複数のロケットだったと述べた。これはミサイル防衛の脆弱性のひとつを示している。もし、敵が発射したミサイルのすべてを察知できないとか、数多くが発射されれば、我々が想像できる最も未来的なミサイル防衛ですら欺瞞されるだろう。
この記事からは、日本だけでなく、アメリカのマスコミも最初は情報が錯綜していたことが窺えます。これを読んで、今回の打ち上げの謎を推測する手がかりがつかめたと感じました。それは最初から我々の目の前にあったものでした。
北朝鮮は、アメリカや日本のMDの探知能力を調べるために、意図的に種類の異なるミサイルを近い時間帯に連続的に発射したのではないでしょうか。北朝鮮が諜報活動で他国が得たデータそのものを入手するのは困難ですが、スカッド、ノドン、テポドンなどのミサイルの種類、落下地点、落下時刻、その他のデータは一般に公表されます。現に、テポドン2墜落のプロセスは詳細に判明しています。これらの情報は北朝鮮としては知りたいはずです。もし、公表されるデータに誤りが多ければ、言われているほどMDの探知能力は優れていないと分かります。この仮説には弱点もあります。目的がそうなら、すべてのミサイルを同時に発射すべきだからです。また、7発目の発射も完全には説明できませんが、考慮には値すると思います。
この仮説が正しいとすれば、北朝鮮が日米のMDをどう評価したかが気になります。今回は事前に多くの偵察資材を投入し、万全の状態でしたから、平時に突然発射した場合に比べるとかなり精度が高く、最大能力だったと言えます。それを北朝鮮がどう捉え、今後何を試みるのかは考えなければならないでしょう。
さらに、同じ記事に書かれている、CDIのアナリスト、ビクトリア・サムソンの指摘を紹介しておきます。
テポドン2の失敗は、北朝鮮のミサイル計画を取り巻く誇大宣伝の範囲を際だたせた。それが想定された能力に関して湧き起こったヒステリーはアメリカのミサイル防衛システムを支援することしかせず、この特別な状況を軽減することは何もしなかった。