韓国の聯合ニュースによれば、中国の商業銀行「中国銀行」がマカオ支店の北朝鮮関連口座を凍結したとのことです。北朝鮮が米国の金融制裁後、中国の銀行に移したため、米政府が追跡調査を行い、中国銀行が口座を凍結したのです。遅いと言えば遅く、まだ積極性は感じられませんが、中国がようやく北朝鮮に対して圧力を加え始めました。こうなると北朝鮮とイランとの接近が心配になってきます。
レバノン情勢に話を移します。しかし、時間がなくて、十分な検討はできていません。
ライス国務長官が予定を変更して、レバノンを先に訪問しました。おそらく、シリアが仲介に乗り出してきたので、アメリカが主導権を取られないようにという目的があったのだろうと想像しました。イスラエル政府が一転して停戦の意志を示しましたが、これは「ヒズボラは無条件でイスラエル兵を解放し、ヒズボラの部隊を国境より20キロ後退させよ」という線でアメリカと停戦条件が一致したためでしょう。イスラエルはレバノン軍がぜい弱なため、北大西洋条約機構(NATO)軍を主力とする多国籍軍の展開を受け入れたいとしています。この停戦条件ではヒズボラのミサイル攻撃は防げません。ヒズボラが所有するFAJR-3ミサイルは、射程距離が32〜48キロで、非戦闘地域に指定したリタニ川以北からもイスラエル領内を攻撃できます。イスラエルとしては、あまりレバノン領内の深いところまで進みたくなくて、20キロ後退させれば十分にヒズボラの選択肢は減ると考えているのかも知れません。しかし、ライス国務長官がレバノン訪問後に何も話さなくなったため、交渉が不調に終わった可能性がありそうです。
この先しばらくは、両者のチキン・レースが繰りひろげられるはずです。イスラエルはレバノンが停戦条件をのまなければ戦線を拡大すると宣言して、ヒズボラに圧力を加えるでしょう。レバノンはどこかで手を打ちたくなるはずです。
戦闘はかなり激しいようです。ヒズボラは人道的な理由から休戦期間を設けたのに、その最中にもロケット弾で攻撃を続けたという情報があります。
イスラエル軍はマルンアラスからビントジュバイルへ進み、戦闘を行ったということです。ヒズボラが少なくとも10人死亡、イスラエル兵は2人死亡という情報もあります。イスラエル軍の動きは非常に分かりやすく、ヒズボラの拠点だけを制圧しようとしているようです。
今回の事件で分からないのは、ヒズボラの狙いがどこにあるのかが見えないことです。イスラエル兵士2名の誘拐と、その翌日のハイファへのロケット攻撃に端を発した今回の事件は、明らかにヒズボラのイスラエルに対する挑発行為です。そうしてイスラエルを立ち上がらせて何をしたいのかが分かりません。ミサイルだけではイスラエルを屈服させることはできません。ヒズボラはミサイルをたっぷりと持っていますが、それでもイスラエルを打倒できる数ではありません。今回の攻撃はイスラエルにレバノンを攻撃させることで、イスラム社会全体にイスラエルの非道をアピールするところに目的があると考えざるを得ません。アメリカが正当防衛論を展開するのは、ヒズボラの宣伝に乗らないようにするためで、意図的にレバノンの主張を無視しているのだといえます。
互いが戦略を講じているのは見えてきますが、紛争の解決につながらないことばかりです。こういう場合、紛争は継続するのが普通ですから、この事件の解決にはまだ時間がかかると考えざるを得ません。ヒズボラには、適当なところで逃げて再起の時期を待つという選択肢もあります。イスラエルが言うヒズボラの殲滅は、レバノン全土を戦場にしないと不可能です。いまは、この紛争は明確な結末を迎えないのではないかという漠然とした予測が見えるだけです。