イスラエル軍がヒアム(Khiam)にある国連軍の監視所を砲撃した事件が故意か事故かは未だに不明です。ヒアムは南部レバノンの地図の右上の方に記載されています。ワシントン・ポストによれば、6時間の間に300m以内に21カ所の着弾があり、その内の12発が100m以内に着弾し、4発が監視塔を直撃したということです。状況から見ると、故意に砲撃したとしか思えません。アナン事務総長が「故意だ」と言ったのは、この状況をふまえてのことです。しかし、とんでもない勘違いが原因かも知れません。国連軍からの要請が誤って伝えられたか、あるいは伝えられなかったのか。要請は伝達されたけど、砲兵隊が何か間違いを犯して砲撃する座標を間違えたといったミスにより、砲弾が誤って発射された可能性はあります。
砲兵隊は長射程なので、直接目標を見られません。観測部隊からもらった座標に向けて正確に砲弾を撃つことだけを考えます。従って、国連部隊の監視塔を砲撃したのなら、それを観測していた部隊がいたはずです。映像で見ても、国連部隊の監視塔は白く塗られ、黒字で「UN」と表記されています。観測部隊にそれが見えないはずはなく、重要な役割だけに頭の回る隊員が受け持っているのです。そこで、推測できるのは、何らかのミスにより、別の観測部隊の目標と監視塔を取り違えたのではないかということです。砲弾が監視所に命中したあと、救出作業中にも砲撃があったということは、不必要な砲弾を撃ったことになり、通常の砲撃では考えにくいことです。もちろん、完全な破壊を狙い、確立した座標に向けてさらに砲撃した可能性も捨てられません。着弾位置と着弾時刻の一覧があれば、また何かが分かるかも知れません。
イスラエルがこの件に対して誠実に対応しないと、国際社会の反発は強まるでしょう。国際問題化した以上、軍警察が出て行き、関与した隊員から個別の事情聴取が行われるでしょう。その過程でミスが明らかになればよし、そうでなければ何らかのペナルティをイスラエルに課すべきです。イスラエル軍が赤十字社の輸送車両を空爆しているという情報もあります。イラク侵攻以降、「テロと戦う時は何をやってもよいのだ」という風潮がまかり通っています。こうした傾向を軽視すべきではありません。