北朝鮮ミサイルの性能を強弁したい防衛庁

2006.8.7

 読売新聞によると、7月5日に発射した弾道ミサイル7発のうち、テポドン2号を除く、ノドンとスカッド計6発は、北朝鮮が設定した航行禁止海域内に着弾していたことが、日米両政府の分析で判明したとのこと。それによれば、すべてのミサイルが半径約50kmの範囲内に着弾していたといいます。防衛庁は「ノドンとスカッドの命中精度は一定程度高く、実戦配備の段階にあることが実証された」とコメントしています。

 マスコミは事件直後から「北朝鮮のミサイルの精度があがった」と言い続けています。しかし、報じられた内容からすると、救いがたいほどの低性能としか言いようがありません。こうした矛盾した、あるいは不注意な報道は避けるべきです。

 通常、ミサイルの命中精度は50%が着弾する直径(CEP)で表現します。読売新聞が報じたのは、全弾が命中する半径であり、このままは比較できません。また、直径100kmの範囲に全弾が着弾する程度では、軍事用ミサイルとしては使えません。たとえ、核爆弾を搭載しても、こんなに外れるのでは目的を達せない可能性があります。ならば、「北朝鮮のミサイルの精度がさがった」と結論すべきであり、なぜ上がったと言えるのかが分かりません。

 一方、日本テレビがすでに、6発中4発は航行禁止海域の中心付近、直径10kmの範囲に着弾したと報じています。このことから、ノドンとスカッドのCEPは10kmであると推定することも可能です。

 しかし、北朝鮮がどこを狙ったのかが特定できないことに注意すべきです。命中精度は狙点からどれだけの範囲に命中するかで決まるのに、その狙点は北朝鮮しか知りません。北朝鮮が事前に一辺が160kmの三角形状の航行禁止海域を設け、その中心付近に着弾していることから、航行禁止海域の重心が狙点であると仮定することは可能です。安全のために全弾を航行禁止海域内に着弾させること、内外に命中精度の高さを証明するには、狙点は一カ所の方が都合がよいからです。

 そうだとした場合、10kmのCEPは、従来言われていたスカッドとノドンのCEPに比べて大きすぎます。これでなぜ命中精度があがったと言えるのか、さっぱり分かりません。

 それ以上に強く求めたいのは、防衛庁が早く報告書を公表することです。前宣伝はもう十分です。早く報告書を公表すべきです。

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