今朝、NHKはイスラエルがリタニ川以南の占領を命じたと報じましたが、これはすでに報じられたことの繰り返しのようです。BBCによると、イスラエル政府はこのために30,000人の増派を検討しています。先に指摘したように、これくらいの兵数はこの作戦には必要なのです。
昨日、ようやく戦線が動きました。STRATFORの戦況図によれば、タイベ(Taibe)を抜けた機甲部隊がアル・カンタラ(al-Qantara)へ進出しました。西部沿岸付近では、ナクラ(Naqoura)を抜けてラス・アベイダ(Ras a-Beida)からシヒーン(Shiheen)に至る道路に進出した部隊が戦闘を行いました。
今後の展開としては、この進出した部分をさらに突出させ、とにかくもリタニ川南岸をまで押さえてしまう方法が考えられます。内陸部はそのあとでゆっくりと占領していきます。それでヒズボラの抵抗を終わらせることにはなりませんが、とにかくも政治目的を達成したと内外に宣伝することはできます。しかし驚かされるのは、イスラエル軍が完全に占領した町が、本当に国境周辺にしかないことです。それ以外の町では未だに戦闘が続いています。これはヒズボラが各所に武器を隠したり、地下トンネルを造ったり、防衛施設を整備してきたことの証でしょう。
地上戦がどうなろうと、レバノン国内全域に対する空爆は継続されています。南レバノンの住民に対して出された外出禁止令は現在も継続されており、いつまで続くのかも分かっていません。このために数多くの民間人が殺され、傷ついています。その理由をイスラエルは、ミサイル攻撃を防ぐためだと主張し、アメリカがそれを後押ししています。この紛争を「テロとの戦い」と位置づけたいブッシュ政権ですが、アラブ人はほとんどがヒズボラに声援を送り、イスラエルの空爆を嫌悪しています。このことは、当然イラクやアフガニスタンでの活動にも悪影響を与えますし、イランへの支持も高めるでしょう。そのムーブメントは、もはやアメリカの力では止めようがないところまで膨らんでいます。米政府がいくら抗弁しても、9.11テロ以降の中東政策は間違い続きだったのです。それは中東を不安定にさせ、今後もその傾向を強めていくことにしか貢献していません。