さらにイ軍が若干の前進。紛争は長期化か

2006.8.11

 STRATFORの戦況図によると、東部戦線の最北端で進展が見られ、マジェオン(Marjayoun)まで北進しました。リタニ川北岸のアノウン(Arnoun)でも戦闘があったようですが、地上部隊がそこまで進出したとは思えません。他の戦域は昨日からほとんど変わっていません。マジェオンからさらに北進してベッカ峡谷まで進んでヒズボラの拠点を破壊することは、今のところは考えられません。東西に走るリタニ川を基準にして南側を占領することになろうと思います。

 そこで、停戦を結び、ヒズボラにミサイル攻撃を止めるよう確約させるというのが、イスラエルの構想でしょう。ミサイル攻撃を止めさせるためには、レバノン全域を占領して、すべてのミサイル・ ランチャーを破壊する必要があります。それはむずかしいので、レバノン政府の介入をイスラエルは期待しているのだと思います。そのためには、レバノン政府が戦争を終わらせたいと考えなければなりません。イスラエル軍が激しく空爆を行うのは、そういう狙いもあるように思えます。昨日、イスラエルはベイルートの西にある歴史的に有名な灯台も破壊しました。この攻撃はヘリコプターから発射されたミサイルによって行われているので、誤爆などではなく、確信犯的なものです。レバノン人の誇りをあえて攻撃することで、国土の荒廃を意識させ、レバノン政府を動かそうとしているのでしょう。

 相変わらず、ヒズボラの奮闘が目立ちます。未だに国境付近で戦闘が続いています。東部戦線では双方にかなりの被害が出ているようですが、詳細は分かりません。ミサイル攻撃による支援と小火器しかない環境で、これだけ粘るのは、精強という以外に評価のしようがありません。アラブ人がヒズボラを応援するのが分かる気がします。しかし、戦闘が長引けば、空爆による一般人やインフラの被害は増えるばかりです。我々にできることは、NGOの救護活動を支援することです。日本政府にこうした紛争に介入し、状況を改善することなど望むべくもありません。官僚にも政治家にも、そうした発想がないからです。軍事学は戦争をするために発展したものですが、今は平和をもたらすために軍事学を応用することが求められています。そうした社会常識を確立し、人材を育てる努力を日本はしてきませんでした。そのため、平和は望むが戦争も知らないという人が多くなりすぎました。そういう国民が持つ政府がすることには期待が持てません。

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