13日に、防衛庁が北朝鮮のミサイル発射に関する報告書の公表を遅らせたと書いた日経新聞の記事に関して、記事をスキャンした画像を送ってくれた方がいました。そのまま掲載するのは問題があると思われるので、論評のみにしたいと思います。
この記事には、アメリカの圧力により、防衛庁が4日に公表の延期を決めたと書かれています。最終決定は額賀防衛庁長官が下しました。防衛庁は早くても8月中旬以降に報告書を公表したいと考えています。当然、この日程は修正した報告書に対してアメリカがどんな返事を返すかによって変化します。アメリカは、詳細を公表することで、生の打ち上げデータを持つ北朝鮮に、解析結果がどれだけズレているかを知られると懸念しているのでしょう。これは解析結果に自信が持てないためと見ることも可能です。防衛庁がどれだけ多くの情報を公開するかは、同庁の姿勢に関わる問題として注目すべきです。
また、解析結果が日米間で異なることについても書かれています。アメリカは、1発目と6発目がノドンで、2発目、4発目、5発目、7発目がスカッドとみなしています。日本は、1発目が新型スカッドとみなしています。その根拠として、国内6カ所にある通信施設で傍受した電波情報と中ロからのヒューミント(人的情報)をあげています。電波情報はミサイルから地上基地へ送られる電波(テレメタリー)のことでしょうか。それが、従来の形式と異なっているのだと考えられます。しかし、ヒューミントの成果はどうでしょうか。元々、今回のミサイル打ち上げでロシアは十分な設備で観測できておらず、中国は完全に遅れを取りました。北朝鮮が中ロに新型ミサイルだったと宣伝する理由もないように思われますから、彼らの情報があてにできるとは思えません。
それから、文末にある軍事評論家の「誘導機器の搭載の有無などを確認しない限り『失敗だ』と断定するのは時期尚早」というコメントは意味不明です。この評論家が言う誘導機器が、ジャイロや加速度とコンピュータで構成される頭脳部分なのか、噴射方向を変えるなどする構造部(翼法)のどちらを指すのか分かりませんが、これらの部品はV−2号ロケット以降の近代ロケットには不可欠で、いまさら有無を考える必要はありません。議論の対象となるべきなのは、その種類です。記者自身も意味が分かっていないと思える記述がしばしば見られるのは、日本の報道の大きな欠点です。