レバノンでの戦闘に参加したイスラエル軍予備役の将校たちが、軍の戦争指導を批判するという異例の事態が起きています。昨日、NHKのBSニュースで、最初にこのニュースを耳にしたのですが、その後、毎日新聞からさらに詳しい情報が報じられました。
20日、地上部隊の予備役兵の将校たちが、ハルツ軍参謀総長に直接報告した事項
- 空軍による水や食料などの補給の不足
- 兵士が負傷兵救出のため何キロも歩かされ、脱水症状になった
- 配布された現地の空撮図が4年前のもので役に立たなかった
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空挺部隊の予備役兵グループが新聞紙上に公表した抗議文書
- 臆病な指揮決定者の優柔不断な態度により作戦が頻繁に変更され、明確な目的なしに敵の領土に長期間とどまるはめになった
予備役兵とはいえ、上層部批判ができたのには驚きです。イスラエル国民全体が現政権の戦争指導を批判しており、その流れを止めることができない状況のようです。
批判の内容はイスラエル軍の体制が極めて劣悪だったことを連想させます。国境線から10kmも前進できなかったのに、補給路に不備が生じたというのは信じがたいほどです。この程度の進撃では普通、深刻な補給不足は起こらないものです。これはヒズボラが戦線後方にゲリラ攻撃を仕掛け、補給を滞らせたことを連想させます。さらに、空路の補給に切り替えても水と食糧が不足したというのは、あまりにも低レベルな話です。
空挺部隊の批判は少々中傷的で、具体的な事実には触れていません。空挺歩兵はビントジェバイル(Bent Jbail)とアイタ・エル・シャーブ(Aita el-Shaab)の戦いに投入され、ほとんど前進できないまま停戦を迎えています。おそらく、これらの戦いについての批判だと考えられますが、戦いの詳細が分かりません。この批判の真偽は確認できないものの、イスラエル軍の不振に指揮能力が関係していた可能性があります。
20日、空挺歩兵部隊のハイマン司令官が退任あいさつで「歩兵の準備をうまくできず、小隊の消耗を防げなかった。責任を重く感じる」と述べたといいます。この「準備」がどういう内容かは分からないのですが、イスラエル軍はヒズボラに勝つ前に、自分自身の戦争に負けていたのかも知れません。
先に、イスラエル軍の戦い方が教科書通り過ぎるのが気になると書きましたが、形ばかり気にして、ポイントを欠いた戦いをした可能性が高いようです。今後、出てくるもっと詳しい情報に注目したいと思います。イスラエル軍がこの問題を解決できなければ、ヒズボラが再び攻勢に出るチャンスを作るでしょう。だから、イスラエルは改善が完了した段階で、その情報をどこかに公表するはずです。