4月26日、イラクのハムダニヤで民間人を誘拐して殺害したとされた海兵隊員と海軍兵士が、予備審問を行わず、すぐに裁判に入りたいと申し立てました。この事件は、米軍人たちがイラク人男性を誘拐して殺害し、男性を武装勢力に見せかけるために近くにシャベルと自動小銃を置いたとされています。こうした偽装工作は広く行われており、現場の部隊では民間人の誤射を誤魔化す方法として公認されているという情報もあります。この事件で偽装は、誤射ではなく、故意の殺害を隠蔽するために用いられました。
海兵隊は公正さを維持するために予定通り予備審問を開く決定を下し、被告人たちの弁護士たちはこの決定を批判しました。犯罪性が明確で、予備審問で裁判を行うかどうか考える必要もないほどなので、こういう事態が起きたようです。被告側はできるだけ出廷せず、裁判もできるだけ簡単にすませたいと考えているようです。
予備審問の省略を申し立てたのは、この事件で起訴されている7人のうち4人です。この4人は、トレント・トーマス伍長(Trent Thomas)、ジェリー・シュメート伍長(Jerry Shumate)、ジョン・ジョッカ三世上等兵(John Jodka III)、マーシャル・マジンカルダ伍長(Marshall Magincalda)です。殺人罪なので、4人全員が死刑になる可能性があります。しかし、実際に殺人罪が下る可能性はほとんどないでしょう。だからこそ、被告側はそれを認めると、該当する隊員が大勢出てくる可能性があるためです。
それにしても、この事件に対するアメリカ社会の無関心には驚かされます。military.comもワシントン・ポストも、AP通信が配信した短い記事を掲載しただけで、自社製作の記事は載せていません。この種の記事を読者が好まないと米マスコミにみなされているためです。この事件とは他に、イラク人女性を集団で強姦した上に頭部に銃弾4発を撃ち込んで殺害し、目的を遂げるために家族全員を皆殺しにした海兵隊員がいます。彼は明らかにサイコパスです。しかし、彼よりも有名な少女殺害事件を自供した容疑者の報道の方が遙かに大きくマスコミに取りあげられています。敵は非人格化され、その人格は尊重されないという法則がここにも見られます。外地に派遣された軍人にとって、敵国の民間人も敵国人であり、銃後の国民もそれを支持するものなのです。この傾向においては日本も例外ではありません。そんな修羅道に落ちないための工夫が必要です。