今朝の産経新聞が報じたアルカイダの拡散を取りあげた記事は実に興味深いものでした。英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の「戦略概観2006」が示した分析を元にした記事です。その要旨は次のとおりです。
- 国際テロ組織アルカイダは組織力が低下したものの、テロリストは世界に拡散したため、武力による壊滅はもはや難しい。
- 2001年のアフガニスタン戦争以降、アルカイダが世界に散らばり、欧米では自国で生まれ育ったテロリストが増加した。こうした自国産の「内なるテロリスト」が自発的にテロを実行する傾向が生まれている。
- アジアやアフリカ各国から移民を受け入れているヨーロッパでは、イスラム系移民らが社会になじめない場合に過激思想に走りやすい。
私としては、これらの中に目新しいものは特にありません。すべて同時多発テロ直後、アメリカが注意すべき問題点として考察したことばかりです。その段階では、あり得る可能性としてピックアップしましたが、こうして現実問題となると、現在予測している状況も将来現実化するのかという懸念が起こります。
当時、私がホワイトハウスにメールを送ったのは、こうしたことを注意喚起したかったためでした。しかし、コリン・パウエルという軍事がよく分かる人が閣僚にいるのだから、アメリカが愚策を採ることはないと信じていました。しかし、大統領は副大統領と国防長官とだけ話をしていました。パウエルが退任したあとは、コンドリーザ・ライスだけが軍事的知恵者となったのですが、彼女は調整役を務めるばかりで、軍事専門家としての動きは見えてきません。
優れた軍事評論を書けても、政治家が指導を誤れば戦争は避けられないということを、対テロ戦争は如実に示しています。