湾岸戦争シンドロームは存在しない?

2006.9.13

 military.comに掲載されたAP通信の記事によると、復員軍人援護局は、全米科学学会に依頼した調査の結果、湾岸戦争シンドロームは存在しないと結論しました。

 湾岸戦争シンドロームには、慢性疲労、記憶喪失、筋肉の痛み、発疹、睡眠障害などの症状があり、特徴的な症状が見いだせないというのが理由です。他にも、白血病、出産異常や先天障害があるといわれていますが、この記事には書かれていません。従軍したすべての国の兵士の中で、戦闘地域に行った者の30%が発症し、非戦闘地域にいた者は16%しか発症していません。これらのごく僅かな人が、従軍と病気との関係を認められただけで、それ以外の兵士は軍務と病気は無関係だとされているのです。湾岸戦争で、兵士たちは油井火災の煙、殺虫剤、劣化ウラン弾、神経ガスにさらされた可能性があります。神経ガスはサリンで、イラク軍の弾薬庫を爆破処理した際、そこにあったサリンを内蔵する化学砲弾が飛散し、周辺にいた人々に被害をもたらした可能性があるといわれています。また、この報告書は、湾岸戦争従軍軍人の中に、筋萎縮性側索硬化症(ALS・ルー・ゲーリック病)があることを発見したとも報告しています。また、不安症、憂鬱、中毒物の乱用などもみられるとしています。

 従軍兵士にとって、認定がもらえるかどうかは重大な問題です。公傷ならば政府が医療費を負担してくれますが、そうでない病気は自費で治療しなければならないからです。普通、軍に志願する者は、怪我をしても政府が面倒をみてくれると考えており、原因不明の病気になる事態を想定しません。現に症状があるのに、自分で治療しなければならないことに不条理を感じる兵士は多いはずです。これまでも湾岸戦争シンドロームは、多くの研究者が様々な原因と治療法を主張し、一定した見解は見いだせずにきました。今回の報告では、それがまた繰り返されただけです。失望を覚える兵士は多いことでしょう。あとは、各地にある復員軍人を支援する団体の援助に頼るしかありません。

 今年8月に放送されたNHKの番組では、内部被爆による放射線障害と重金属中毒のいずれもが、遺伝子の異常を引き起こしているという研究者を紹介していました。報告書を直に見ていないので分からないのですが、彼らの研究が今回の報告書に参照されたのかが気になります。

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