米復員軍人局の大失態

2006.9.22


 military.comに掲載されたAP通信の記事によると、信じがたい計算違いを米復員軍人援護局がやったようです。2005年以降、同部では30億円の予算が不足しています。これは、2005会計年度の予算が厳しいことを知っていた同局が何とか予算を減らそうとして、イラクとアフガニスタンでの戦闘の前のデータを用いたためだと、政府説明責任局が指摘したのです。

 開戦前のデータだから、負傷者の治療や、戦死者の埋葬にかかる費用が少ないのは当たり前で、政府説明責任局は「非現実的な仮定、見積状の誤り、不十分なデータ」と批判しながらも、一部は国防総省が同局に正しいデータを提供しなかったからだとも指摘しました。この予算では、医療スタッフを減らしたり、慢性身体疾患や精神障害を患う大勢の退役軍人を退院させたり、転院させたりすることになるといいます。また、自分で掛け金を支払う弱者保護のための医療扶助や個人加入保険に依存することを強いるともいいます。

 政府説明責任局の指摘により、近く予算不足は解消される見込みです。

 世間の人々には、兵士を声援で送り出すのに、傷ついて戻ってきた兵士の面倒はみない傾向があります。今秋封切られる映画「父親たちの星条旗」の原作本「硫黄島の星条旗」に、戦時国債を集めるために負傷兵が各地を訪問して回ったことが書かれています。ある町では、負傷兵にロマンチックなイメージを抱いていたらしく、大勢で負傷兵を出迎えたものの、列車から降りてきた兵士たちの無惨な姿に腰を抜かし、家に帰ってしまったとか。戦争について調べていると、なぜか負傷兵には冷たい世間の実情が見えてきます。それは戦死者に対する敬意と比べると、なぜか大きな格差があるものなのです。

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