シュナイダー委員長・テポドン2は腐食で失敗?

2006.10.2

 毎日新聞が国防科学委員会のウィリアム・シュナイダー委員長のインタビューを報じ、テポドン2は「液体燃料をタンク内で長期間(2週間)維持したため、ミサイルに腐食が生じたことが引き金になったとみられる」と指摘しました。

 しかし、シュナイダー委員長の話はあくまで推測であり、それ以上のものではありません。毎日新聞の独自インタビューなので英文記事との比較はできませんが、少なくとも記事を読む限りではかなりの矛盾が見られます。シュナイダー委員長は次のように述べたと言います。

  1. ロケットエンジンのノズル(噴出口)など精密部位が腐食して適切に機能しなかった 
  2. 腐食により強度が弱まったミサイル外板にエンジン燃焼の圧力で穴が開いた


 どちらも発射までに時間があったこととは関係がないことです。燃料を長期間保存した場合、タンクは腐食しますが、ノズルが腐食するとは考えられません。ノズルに燃料や酸化剤が通るのは打ち上げ時からで、1分かそこらで腐食するわけがありません。同様に、ミサイル外板が腐食するのも考えにくいことです。そうなれば、配管やターボポンプなどの別の部品も腐食し、外部からのモニターで異常が発見されるかもしれません。また、そこまで漏れたら機体内部に燃料が溜まっているはずで、打ち上げ時に引火する可能性があります。燃料と酸化剤の両方のタンクから漏れれば、自然発火する危険性もあります。

 シュナイダー委員長は「設計面で追加的な検討を行わねばならないだろう」とも述べていますが、長期の待機だけが問題なら、再設計は必要がないことになります。この記事が変だと思うのは、シュナイダー委員長がロケット工学の基礎を無視した発言ばかりしているように見えるからです。インタビューした記者は変だと思わなかったようです。せっかく、インタビューしたのに、この記事は何の意味も持っていません。こういう不合理な記事がしばしば出てくるのが、日本のメディアの欠点です。

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