上海の復旦大学国際問題研究院の沈丁立・副院長が北朝鮮が核実験を強行しても「米国は手を出せないと、北朝鮮は判断している」「(中国が)度を過ぎた制裁を行うことはない」という見解を発表したという報道がありました。また、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」には、「(核実験宣言は)虚言ではなく、明白な行動を前提としている」という記事が載りました。
最近の中国の発言を見ていると、核実験を実力で阻止するつもりはないように見えます。沈氏の見解はそれを裏づけるものです。中国が北朝鮮への支援の大半を打ち切れば北朝鮮が一気に崩壊し、韓国側への難民の流出が起こり、それをきっかけに北朝鮮の韓国への併合が起こるでしょう。そうなると、朝鮮半島に対する中国の影響力が大きく損なわれ、米軍が中国国境へ近づくのを許します。緩衝地帯としての北朝鮮の役割を失うのは、朝鮮戦争に多大な犠牲を払ってまで介入した実績を無にすることになります。
しかし、中国にとって、北朝鮮が核武装をすることは絶対に許せません。中国は国際的な常識を無視した、独自の見解で戦争をはじめた過去を持っているため、武力で恫喝して核実験を止めさせることは不可能ではありません。しかし、その手を使えば、北朝鮮と韓国の結びつきを強めるだけです。北朝鮮にクーデターを起こさせ、金正日だけを追放し、自分に都合がよい新しい元首を立てる可能性もありますが、その可能性もまた小さいように思えます。金正日はその危険性を理解しており、あらゆる面で警戒していると思えるからです。結局、中国は制裁を今よりも強めるものの、北朝鮮が崩壊しないように、細心の注意を払って総量を調整するだけではないかと考えられるのです。そして、北朝鮮が根を上げるのを待って、核開発の中止を要求するのです。
ロシアの制裁が功を奏しないのは説明するまでもありません。彼らは湾岸戦争でもイラクの説得に失敗しています。日本とアメリカの制裁はさらに北朝鮮を締め付けるでしょうが、崩壊に至らせることはできません。北朝鮮はますます世界から孤立していきます。北朝鮮が最近、反米連合を作るよう声明を出したのも、中国離れの表れでしょう。こうした反米連合が拡大して大きな影響を及ぼすことはあるかもしれませんが、その可能性はそれほど大きくないと考えます。北朝鮮の核実験と、その結果起こる動きについて我々は注目し、賢明に立ち回らなければなりません。そのためには、ロシアの日本漁船銃撃事件の時のような硬直した外交では不十分です。