欧米のメディアは今、バクダッドの治安悪化について書き立てています。BBC、military.com、ワシントン・ポスト、iraqsun.comほか、いまやイラクに関する報道はバグダッド周辺の暴力事件の増加について一色です。一般市民、イラクの軍人、米兵すべてに対して、自爆攻撃、IED、銃撃など激しい暴力行為が続いています。モスルとキルクークでは、自爆攻撃で24人が死亡、72人が負傷しました。交番を狙った自爆攻撃を防ごうとした銃火がガソリンスタンドの燃料に引火し、12人が死亡、24人が負傷。これらは記事に書かれている事件のほんの一部です。これだけ見ても、イラクが内戦状態にあることは議論の余地がありません。
iraqsun.comは、マリキ首相がナジャフでシーア派の代表的な二人の指導者、シスタニ師とサドル師に面会し、激化する部族抗争について協力を求めたものの、成果は僅かだったと書いています。マリキ首相は、フセインの裁判が終局に差し掛かっているのが暴力多発の原因としており、裁判が終われば減少すると見ています。しかし、この見解はやがて誤っていることが証明されるでしょう。
アメリカでは、この状況がベトナム戦争の「テト攻勢」に似ているといわれ、ブッシュ大統領もそれを認めました。しかし、これは単なる例えに過ぎず、軍事的には似ているとは言えません。テト攻勢は北ベトナム軍(民兵のベトコンを含む)による計画的な攻撃で、国家同士の戦いでした。また、テト攻勢は一般市民を攻撃対象にはしておらず、部族抗争とも違っていました。軍事作戦としては、テト攻勢は失敗だったといわれますが、高い宣伝効果を生み、アメリカの反ベトナム・ムーブメントが進展するきっかけになりました。こうした比喩は状況を誤認する元で、大統領がそれを認める必要はなかったといえます。
むしろ気になるのは、米軍が8月初旬以降高い警戒態勢を敷いているにも関わらず、状況が好転しないことです。ワシントン・ポストによれば、バグダッドには68,000人の米兵とイラク兵がおり、
その他15,400人が関連する任務に就いているといいます。米兵とイラク兵に対する攻撃は、夏以来43パーセントも上昇しており、治安維持のために集まった部隊が狙い撃ちにされている状況も浮き彫りになっています。9月にバグダッドで死亡したイラク人は2,667人にも昇っています。今月はさらに増加するのではないでしょうか。