military.comによると、チェイニー副大統領が、水責め(water boarding)とよばれる拷問方法を支持するかどうかが問題となっています。
今秋火曜日、ラジオ番組に出演したチェイニー副大統領は「命を救うためなら、水責めは朝飯前だと思いますか?」と尋ねられました。要するに、イラクやアフガンで戦う米兵の助けになるならば、テロ容疑者を拷問するのかという質問です。副大統領は「ええ、私にとっては朝飯前ですが、しばし私は拷問を認める副大統領として批判されました。我々は拷問をしません。我々の関心事ではありません」と答えました。この一言が物議を醸したのです。
この事件は、ちょっとした言葉のあやの問題に過ぎないように思われるかも知れません。ホワイトハウスはチェイニー副大統領は拷問を認めていないとコメントしています。しかし、ヒューマン・ライツ・ウオッチなど人権擁護団体は、「(水責めに関する)ブッシュ政権の最初の明確な是認」とみていると、記事は書いています。
水責めは、縛ったり、猿ぐつわをかませた容疑者を溺死させるように水に漬けることで脅迫し、自白を強いる方法です。ABCニュースによれば、ベトナム戦争で拷問を受けた経験がある共和党のジョン・マケイン上院議員は、水責めを「極めて強烈な拷問」としています。また、この記事は、1968年1月のベトナム戦争中と、1901年初期に米西戦争中に水責めを行った米軍人が軍事裁判にかけられた史実を紹介しています。つまり、現状はこれら当時よりも悪い状況にあるといえます。
人権擁護団体が疑いの目を向けるのは、米政府が非公式に拷問を容認していると思われる事実があるためです。現役やOBのCIA職員がABCニュースに、「2002年にブッシュ大統領、コンドリーザ・ライスとジョン・アシュクロフト司法長官が署名した、水責めを含む技法を承認した大統領の裁定が存在すると言っています。つまり、CIAが自身の判断で拷問をした場合、職員自身が責任を問われることになります。それを防ぐために、当時の権力者が署名した書類を作成し、CIAにお墨付きを与える必要があるのです。それなしには、CIAは安心して拷問を行えません。
ジュネーブ条約は、捕虜に自問できる事柄を規定しており、氏名、階級、生年月日、軍の番号、連帯の番号、個人番号、登録番号(それらの番号がないときは、それに相当する事項)しか尋ねてはならず、これらに捕虜が故意に答えない場合、階級や地位に応じて得られる特権に制限を受けると決まっています。捕虜には肉体的、精神的な苦痛を与えることも禁じられており、医療を無償で提供することも義務づけられています。さらに、捕虜が死亡した場合は、遺書や検死報告書などを提出する規定もあるため、拷問をすると、ジュネーブ条約のさまざまな規定に違反することになるのです。
日本でこういう話をする時に感じるのは、拷問に対する日本人の意識が低すぎて、問題を認識してもらえないということです。「やむを得ない場合もある」と考える人があまりにも多いのです。警察の容疑者の尋問に関してすら、弁護士が同席するのは先進国での常識なのに、「容疑者が自白しなくなる」と反対する人がいます。まして、テロ容疑者には人権を認める必要がなく、場合によっては暴力をふるっても構わないと考える人がいても不思議ではありません。アブグレイブ刑務所の虐待事件の写真を見て「SMプレイと大差なく、大きな問題ではない」と言った人がいました。しかし、これらの写真は拷問の様子を撮ったものではありません。拷問する前の準備として行った虐待行為であり、本当の拷問はその後に行われたのです。それらに関する資料は一切明らかになっておらず、この事件で有罪になった軍人の口から一部が漏れただけです。
日本のような立場の国にとって、拷問を認めることはできません。防衛庁の防衛省への昇格と同時に自衛隊の海外任務が本来業務となります。海外任務に就く時、自衛隊が戦争法規を守るという評判が維持されていることが重要なのは、言うまでもありません。しかし、このことに対して国民も国会議員もあまりにも意識が薄く、それが失敗をもたらす懸念を消せません。