イラク軍に譲渡した武器の紛失

2006.10.31

 年末までに武装勢力の武装解除はできないと昨日書きましたが、それを裏づける新しい問題が発覚しました。military.comによれば、米軍がイラク保安部隊に譲渡した武器は、25個ごとに1個が紛失していることが米政府の報告書によって判明しました。その総数は14,030個で、内訳はセミオートマチック・ピストルが13,180丁、アサルト・ライフルが751丁、機関銃が99丁です。しかも、供給した370,251個の武器のうち、シリアル番号を登録したのは1万個足らずで、紛失した兵器を追跡することは困難です。その他の武器も交換部品や技術マニュアルがないために、修理ができない状態です。米軍は年末までに325,500人のイラク軍に武器を供給する予定でした。また、報告書はさらに未確認の紛失がある可能性も示唆しています。

 武器は紛失するもので、故障も起こるものとはいえ、あまりにも数字が大きすぎます。報告書には、どの段階で紛失したのかは書かれておらず、紛失の実態が十分に明らかになっていないことも問題です。イラク軍から武装勢力に武器が流れている可能性も十分に考えられます。最も大きな問題は、武器の整備計画が何もなかったことです。普通、軍の補給物資の一定部分を交換部品が占めるのは常識で、イラク軍に武器を渡す以上、交換部品も供給しなければなりません。また、フィールド・マニュアルの翻訳も進めて、イラク軍自身で武器を整備できるようにする必要があります。イラクにも整備技能を持った者はいますが、武器が違えばフィールド・マニュアルや整備訓練が必要です。

 アメリカが本気でイラク軍の自立を考えるなら、こうした問題は起こるはずがありません。この状態は、イラク軍の自立が単なる政治ショーに過ぎないことを端的に表しているといえます。このまま放置すれば、供給した武器のほとんどは使えなくなります。米軍は、問題はこれから改善するといいますが、あまりにもタイミングが遅いとしか言いようがありません。

 なお、昨日、10月の米軍の戦死者は101人となり、三桁を記録しました。

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