川の真下で地下鉄を爆破できるか?

2006.11.7



 Independent紙によると、イギリス、ロンドンのウーリッチ刑事法院で、アルカイダ系のテロリスト、ディレン・バロット(34)がロンドンを舞台にしたテロ計画を証言しました。バロットは2004年8月にテロ計画を企てた容疑で逮捕されていました。

 その計画は、2004年3月11日に起こった、200人を殺害したマドリッドの爆弾事件をモデルにしていました。その計画には、ダーティ・ボムやタンクローリーの使用も含まれていました。また、テムズ川の下で地下鉄を爆破し、地下鉄のネットワークを洪水にするテロもありました。しかし、技術的な問題については記事には書かれていません(記事になくても、証言に含まれていた可能性はあります)。

 バロットの証言は次のように記事に書かれており、これを読む限りは、河の下を通過する間に地下鉄の貨車を爆破するように思えます。

 " ...and an attack on London's rail or Underground network, including the Heathrow Express, of an explosion on a Tube train while in a tunnel under the River Thames."

 しかし、テムズ川の下を地下鉄が通過する時間は1分未満でしょう。地下鉄の中には管理用に場所を示す目印が設置されているものですが、走行中にそれを正確に目視できるのでしょうか。目印なしに、的確な場所で爆弾を起爆できるとは思えません。また、川底を崩壊させるのなら、列車ではなくトンネル上部のコンクリートに穴を穿ち、そこにダイナマイトを大量に仕込む必要があるように思えます。

 彼はアメリカでの爆弾事件も計画したことがあり、それは同時多発テロよりも前のことだったと言います。標的は、ワシントンの国際通貨基金と世界銀行ビル、ニューヨークのニューヨーク株式取引所とシティグループ・ビル、ニューアークのプルーデンシャル・ビルでした。攻撃方法は爆弾を積んだリムジンやハイジャックしたタンクローリー、ガスボンベ、航空機を使う予定だったといいます。ビルを倒壊させるのなら、航空機(それも大型の)を使わない限り、成功はしないでしょう。1993年2月26日に起きた貿易センタービルの爆破事件では、600kgの爆弾を使い、爆風は4層に渡って突き抜けましたが、それでもビルは倒壊しませんでした。

 どうも、バロットの計画はイメージが優先していて、実現性に欠けるという印象しかありません。映画や小説に触発された可能性を考えてしまいます。そして、こうした非現実的なテロ計画でも重罪を科すことができるのでしょうか?

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.