military.comに興味深いコラムが載りました。「Accountability, Four Years Too Late(遅すぎた4年後の辞任)」というタイトルの、ポール・リックホフによって書かれたコラムです。短いながらもこの一文は、ラムズフェルドを徹底的に批判し、辞任を歓迎する内容となっています。
リックホフは、もともとイラク侵攻の理由は馬鹿げていると考えていましたが、とにかく現地へ行くべきだと考えていました。しかし、バグダッドでパトロール任務に就くうち、これは「我国の歴史で最も大きい外交政策ミスのひとつ」と確信しました。コラムには次のような記述があります。
我が兵士たちが、旧式のヘルメットと危険な装甲のないハンヴィーと共にイラクに送られたとき、誰も責任を問われなかった。アブグレイブ刑務所の捕虜虐待事件にさらされた時、ブッシュ大統領は彼の味方をした。イラク戦争が4年間の暴力と流血に突入したとき、ラムズフェルドは目を細くしたまま指揮権を握り、旧態依然とした方向に我が軍を導いた。
そして、リックホフは「そんな国防長官を我々は忘れてはならない」と結論しているのです。さらに、文末でこう書いています。
国防長官。あなたが決して理解できない以上にイラク戦争の複雑さを理解し、察している大勢のアメリカ人がいる。彼らは軍服を着た勇気ある男女だ。彼らはずっとそこにおり、そこにまだ留まっている。すべではドナルド・ラムズフェルドの遺産のせいだ。最も困難な仕事は今日から始まるのだ。
ここまで元兵士が国防長官を批判するかと驚くような内容です。ハンヴィーの装甲については、ラムズフェルドが「今ある物で戦え」と発言し、批判を浴びたことがありました。湾岸戦争時の中東軍指揮官ノーマン・シュワルツコフ大将が「長官に失望した」と異例の声明を出したことが思い出されます。
リックホフは全米イラク・アフガニスタン退役軍人会(Iraq and Afghanistan Veterans of America : IAVA)の創設者で、「Chasing Ghosts(亡霊を追いかけて)」の著者でもあります。
創設者が徹底してイラク侵攻を批判しているため、IAVAの公式見解もこれと同じです。IAVAの会員数は60,000以上にのぼります。会員は退役軍人と一般人のサポーターから成るので、この数字が退役軍人だけか両方を含んでいるのかは分かりませんが、もしそれだけなら、退役軍人たちの怒りがいかに激しいかが窺えます。彼の著書は、タイトルから想像できるように、不合理な理由で海外に派遣された兵士の怒りが内容の中心であり、州軍少尉としてイラクとアフガニスタンに派遣されたリックホフの自叙伝です。なお、リックホフは民主党員ではなく、ケリー上院議員が大統領選に出馬した時、自分の助言をケリーが無視したために、超党派的な立場を取っているとのことです。そのためかは分かりませんが、IAVAのオンラインショップで売っているTシャツの胸元には「Support the troops, listen to them.(兵士を支持し、彼らの話を聞け)」とプリントされています。(笑)
なお、IAVAのサイトにあるビデオ・ギャラリーは、兵士たちが撮影した貴重な映像がアップロードされています。参考資料として必見です。