潜水艦「あさしお」が輸送船「スプリングオースター」と接触した事故で、「海自関係者によると、あさしお側から見て、スプリング号が来る方向に遠ざかっていく船があると、この船とス号の二つのスクリュー音は聞き分けるのが難しく、1隻しかいないように聞こえた可能性があるという。」と読売新聞が報じました。遠ざかっていく船は無関係なのではなく、間接的に事故に影響しているというのです。このため、海保と海自は事件の前後に近くにいた船を探しています。
こうしたことはまったく可能性がないわけではありません。原子力潜水艦はディーゼル潜水艦よりも騒音が大きいため、ディーゼル潜水艦が近くにいても分からない場合があるといいます。こうなると、この事故を評価できるのは海自のソナー要員だけです。ソナーに関しては、海保の調査官も海自の話を聞くしか調査方法がないのです。この分野に関しては秘密事項が多く、公開されている情報から真相を推し量るのは困難です。音が混じったことを分からなかったのが、どれだけの問題かを判断することはできません。遠ざかる船のスクリュー音は、近づいてくる船のスクリュー音よりも大きく聞こえることは、理屈としては分かります。しかし、ソナー要員がそれをどれだけ聞き分けられるのかまでは、ソナー担当の経験がある者にしか分かりません。風呂に模型の船を浮かべて実験しても、推論以上の判断はできません。調査結果も発表されるのは大まかなことだけで、多くは伏せられるでしょう。海自が真相の追求に誠実であることを期待するしかありません。
ただ、先に書いたように、事故現場は定期フェリーの航路で、関西と九州を行き交う他の船舶にとっても、よく使うルートだったといえます。そういう場所で浮上訓練は避けた方がよいと言うことはできます。