アンバル州での米兵戦死が急増

2006.11.27



 26日をもってイラク戦争は3年8ヶ月が経過し、ブッシュ大統領の父親が参加(最年少の雷撃機パイロットでした)した第2次世界大戦よりも長期間となったと、military.comが報じました。ちなみに、ベトナム戦争は8年5ヶ月、独立戦争は6年9ヶ月、南北戦争は4年です。死傷者の数では、南北戦争が少なくとも620,000人、第2次世界大戦が約406,000人、ベトナム戦争が約58,000人、朝鮮戦争が約37,000人、第1次世界大戦が約116,000人です。

 また、過去3ヶ月で、バグダッド市内で戦死する米兵よりも、アンバル州での方が増えていると、military.comが報じました。8月7日から11月7日までの間、米兵の死者数245人中、3分の2がバグダッド以外の地で死亡し、米兵10人中4人がアンバル州で死んでいるということです。ドナルド・ラムズフェルド国防長官が「暴力の大部分はバグダッドの30km以内で起きている」と述べたのと異なり、AP通信の分析では、8月7日から11月7日までの間、バグダッドで73人が死亡し、アンバル州では103が死亡しました。2003年の同じ期間と比較すると、およそ100人少ない148人が死亡しており、暴力の激化は明白です。死亡原因では、IEDが約40%、小火器や狙撃が13%、特定できない戦闘による理由が33%となっています。

 私は10月24日付けのレポートで、これに関連する分析を書きました。しかし、現状はこの時よりも悪化しているのです。脳天気な人は、過去の戦争の死者数と単純に比較して、3,000人に満たない死者なら、まだまだ行けると考えるでしょう。しかし、イラク侵攻は他の戦争にはない大きな特徴があります。それは負傷者の数が異常に多いということです。通常、死者1人に対する負傷者は2〜4人の間です。しかし、イラク侵攻では7倍を超える負傷者が出ています。死者3,000人なら負傷者は精々1万人なのに、すでに2万人を超えているのです。普通の戦争なら6,000人の死者が出ている段階だと仮定することができます。

 軍隊には、無駄死にさせる兵士はひとりもいないのです。現在のように、効果が出ない任務を繰り返すのはまったく無意味です。それを変だと思わないのは、心のどこかに殉教的な願望があるためです。そういう人は他人を巻き込む戦争をはじめても、罪だと思うどころか、神の仕事を手伝うのだと勝手な解釈をするものです。こうしたイデオロギー的な発想は軍事問題を考える上で障害にしかなりません。軍事問題を考えるためには、世界平和を達成するという崇高な信念だけでは不十分で、狡猾なまでの冷徹な情勢分析の共存が必要です。聖書(あるいはコーラン)しか頭にない人が軍事問題の決定権を握るのは極めて危険です。

 アメリカでは、イラクに一時的に増派して、その後に段階的に撤退する方法が浮上していると聞きます。どんな選択肢をとるにせよ、事態が好転することはなく、悪化するのを甘んじて受けなければなりません。しかし、それは我慢しなくてはなりません。勝てない場所に留まるよりも、出直して、勝てる場所に兵力を集中的に投入する方がよりよい戦略なのです。

 先日、APECにおいてブッシュ大統領は久しぶりに笑える発言をしています。記者会見でイラクに適用できるベトナムの教訓は何かと聞かれたブッシュ大統領は、「イラクでの任務は完了には困難が伴うが、やめなければ成功する」と発言しました。やはり、この人は何も分かってはいないのです。

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