米陸軍が携帯型原子炉を装備する可能性

2006.12.5



 米陸軍は将来、運搬できる原子力発電機を携えて遠征することになるのかも知れません。military.comが、陸軍科学会議の報告書で提案された案を報じました。

 現在、イラクでは補給物資の70%が石油で占められています。石油の輸送ために約千台のタンクローリー車を使っています。そこで、航空母艦に搭載している5メガワットの原子力発電機を持って行けるようにすべきだというわけです。この発電機で旅団が使う電気をまかなう予定です。

 イラクでの補給の問題がこういう形で浮上してきたようです。この報告書によると、現在、国防総省の物資センターから最前線まで1ガロン(約3.8リットル)の石油を運ぶ総費用は42ドルもかかっています。なんと、1リットルあたり約11ドル(約1,265円)。民生用の石油価格とは桁がひとつ違います。

 私はこの数字に驚くべきではないと思います。もともと、軍隊は恐ろしく経済性の悪い組織なのです。特に、イラクでは運転手を高額の費用で雇わなければならないとか、警備会社を使わなければならないとか、悪い要素が重なっています。そして、高額の石油を燃費が極めて悪い装甲車両が使うわけですから、金がかかって当然なのです。記事にも書かれていますが、発電機は攻撃から守る必要があります。戦線がある戦いなら発電機を旅団司令部に配置して、電気ケーブルを配下の連隊、大隊へと安全に延ばすことができます。しかし、イラクのように、四方のどこから敵が来るか分からない場所では、駐屯地単位に配置するしかなく、そこは常に迫撃砲やロケット弾の攻撃を受ける恐れがあります。将来実用化されても、こういう場所では使いにくいものになると予想されます。それから、原子炉には冷却用の水が必要なので、川や湖、海などの近くにしか設置できないはずです。

 アメリカはこうした装置を開発する能力があり、世界平和を望む気持ちも強く持っています。しかし、時として、その使い方を誤ります。それは本当に残念なことだと思います。

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