民主主義国としてはやむを得ないことですが、イラク政策の転換に時間がかかりすぎています。ここしばらく、ラムズフェルドの退任挨拶やイラク訪問、アメリカの世論調査の結果が報じられていますが、ブッシュ政権は転換政策について何も語らず、アメリカの外交政策は空転したままです。恐らく、政府内部でも意見がまとまらないのでしょう。もともと、「テロとの戦い」という、まともな定義すらない政策でしたから、進路を変えるのも大変なのでしょう。
BBCによると、イラクのジャラル・タラバニ大統領は、ベイカー委員会の報告書を「公正ではない」と批判しました。タラバニ大統領は、イランとシリアの協力で治安を回復するというベイカー委員会の方針を称賛していましたが、報告書が発表された後は、憲法侵害の恐れがあると批判に転じました。報告書がバース党の残党を起用を示唆したことは、「独裁政治に対するイラクの人々の長い戦いに逆行する」と、同大統領は批判しました。フセイン大統領がクルド人を弾圧したため、クルド人のタラバニ大統領にすれば、容認できない話なのでしょう。しかし、イラクで最も先進的なのが、スンニ派なのは否定できないことです。早急な復興のためには、スンニ派の穏健派を取り込んだ方が話は早いでしょう。先日見たドキュメンタリー番組では、形だけバース党に参加していた医師が追放されたため、バグダッドの医療体制が崩壊したことを報じていました。こうした人たちの協力なしに、イラクの復興はあり得ないと考えられます。
アメリカがこのように「もたついている」間に、イランがウラン濃縮を拡大したことが、military.comから報じられました。イランのマハムード・アフマディネジャド大統領は「3,000台の遠心分離器を設置した。これは商業的な生産へ向かう第一歩である。60,000台の遠心分離器を設置すれば、核燃料を生産できるようになるだろう」と述べました。イラクで無用な策を展開している間に、イランの核開発が前進しています。国連の制裁も無視して、イランは核開発を推し進めているのです。正しい目標に正しく焦点を合わせなければならないという戦略の基本原則を無視したブッシュ政権は、世界をかえって危険にしているのです。