アルジャジーラが、イラクでのテロ事件の増加を報じました。過去3ヶ月と比較して、攻撃の回数が22%増加し、民間人の死傷率は2%だけ増加しました。攻撃の3分の2は米軍をはじめとする占領軍を狙ったものですが、犠牲者のほとんどはイラク人です。全攻撃の45%はバグダッドとアンバル州で起きています。イギリスでは王立国際問題研究所が「イラクへの介入は酷い誤りであり、アメリカとは距離を置くべきだ」という報告書を公表しました。遅きに失した報告です。私は3年前から、そう言い続けてきました。
それでも、ブッシュ大統領はやはりイラクに米軍を増派するつもりのようです。ワシントン・ポストが大統領執務室で行われた大統領とのインタビューを報じました。(インタビュー映像はこちら)
「私は、我々は(イラクの)陸軍と海兵隊の兵士を増やす必要があると信じる気になっています」とブッシュは言い、ゲーツ長官にその勧告案を持ってくるように命じました。ゲーツは命令に従うタイプですから、その通りにするでしょう。そして、軍事的に意味のない増派が実行されるというわけです。
ブッシュ大統領は、パウエル氏が発した警告も聞く耳持たないようです。「私は“壊れている”という言葉は聞いたことがありません。しかし、“ストレスを受けている”とは聞いたことがあります。我々は我が軍を立て直す必要があります。軍が大量に使われたことは議論の余地はありません。そして、根本的な問題は、共和党と民主党が、我が軍とアメリカ国民を、我が軍が長い戦いに関わり続けるための準備や能力を持ち続けさせるのを確実にするために、政府と共に活動できることではないでしょうか?」
パウエルの貴重な提言も「聞いていない」で終わってしまいました。まさに「馬の耳に念仏」です。また、自分に都合がよいセリフを、さも大統領らしい表現に脚色できるところが、ブッシュ大統領の唯一の特技なのだと思います。この発言全体をどう聞いても、根本的な問題ではない、大統領の願望しか聞こえてきません。単に、挙国一致体制を作りたいと言っているだけです。根本的な問題とは、テロリズムに対してどう戦うかであり、そのためにイラク政策をどう変更すべきかであるはずです。もうこれ以上、彼に期待することは何もありません。
ちなみに、ワシントン・ポストは、従来、482,000人だった現役兵士が2001年に507,000に増員され、まもなく512,000人になると書いています。陸軍は、この30,000人の増員を一時的ではなく永続的にし、年あたり7,000人以上の兵士を追加することを望んでいます。陸軍の見積もりでは、10,000人あたりの年間費用は12億ドル(約1,416億円)です。この数字は頭に入れておいて損はありません。軍事政策を考える上での基本的な数字だからです。