元統合参謀議長が同性愛者の入隊を容認

2007.1.3
2007.1.5追加



 ニューヨーク・タイムズ紙に、ジョン・M・シャリカッシュヴィリ元統合参謀本部議長が、ゲイ、レズビアン、バイセクシャルの志願を認めたいという意見を寄稿しました。

 1993年、当時現役だったシャリカッシュヴィリ統合参謀本部議長は、同性愛禁止を支持していました。しかし、今は考えが変わったというのです。同性愛者が軍隊の中にいることは、部隊の指揮を下げ、隊員募集にも悪影響を及ぼすと考えたのです。クリントン大統領がこの規則の撤廃に挑戦しましたが、失敗しました。しかし、シャリカッシュヴィリ元統合参謀本部議長が昨年行ったゲイの隊員との対話や、軍人を対象としたアンケート調査の結果で、同性愛者との勤務を忌避しないという隊員が多かったことから、同性愛者の入隊を認めても支障は出ないと考えられると結論しました。現在、アメリカが当面している状況に対応するためには、同性愛者の志願を受け付けるべきだというのです。

 このことは、軍隊がいかに男性中心の世界であるかを示しています。米軍の軍紀は、アナルセックスを禁じており、その刑罰は極めて重く、最高刑は死刑です。ロック歌手だったと思いますが、何とかして除隊になるために、健康診断の際に軍医に「ある隊員を好きになってしまい、彼への想いを押さえることができない」と嘘の申告を行い、首尾よく除隊処分になれたと言う人がいます。

 変な話ですが、戦争になると軍は頭数を確保するために、様々な制限を解除してきました。アフリカ系人種の入隊はかなり古くに認められていますし、第2次大戦では婦人部隊が増加し、それが女性の権利運動を促進する結果になりました。しかし、最後の砦ともいえる同性愛者の入隊は21世紀に入るまで、皮肉にもテロとの戦いが起こってようやく認められたというわけです。こうなるとアナルセックス罪もいずれは撤廃され、強姦罪に統一される可能性すら出てきます。また、強姦罪も「同意のない妻以外の女性との性交」という規定ではなく、「性別に関わらず、同意のない者との性交」のように書き換えられるべきでしょう。同性愛者の女性が女性を強姦した場合に強姦罪が適用されないというのは変な話です。(余談ですが、強姦罪は「同意の有無に関わらず、16歳に達しない女性との性交」も禁じています)

 問題は同性愛ではなく、性欲をコントロールできるかどうかにあります。同性愛は同姓とのセックスを望む人と解釈されがちですが、同性に恋愛感情を持つことと考えた方が正確です。ノーマルであっても、性欲を押さえられない者は強姦を行って問題を引き起こします。世の中には、両方の性器を持って生まれる人もおり、そうした生来の特質によって差別されるべきではありません。同性愛者に生まれるかどうかは、母親の胎内にいる内にホルモンバランスによって決まるので、本人の責任とはいえないことが医学的に立証されています。

 大衆の同性愛に対する意識も変化しています。映画「Xメン」は、突然変異で特殊能力を持つ主人公たちが人類から弾圧を受けながらも人類を助けるストーリーですが、そこには同性愛差別が背景として使われています。重要なキャラクターである「マグニート」を演じるイアン・マッケランが同性愛者であることは、そうしたテーマを強調するためです。

 同性愛者の入隊を正式に許可することで、軍隊に新しい側面が加わる可能性があると、私は期待しています。

(銭湯犬さんから、同性愛者が生まれる理由について投稿を頂きました。こちらをご覧ください)

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.