民主党からイラク増派に反対の声

2007.1.6



 昨日、3月に辞職するアビザイド中東軍司令官の後任に、ファロン太平洋軍司令官が指名されたことが報じられました。恐らく、今後は海軍の支援が中心になることを示唆した人事と思われます。つまり、地上軍が撤退した後、イラク軍を空母艦載機で支援し続けるということです。しかし、アメリカのメディアはこれを歓迎するどころか、「予想外」という言葉で当惑を示しました。何をしても理解されないのがブッシュ政権の欠点です。

 来週、ブッシュ政権は意味のないイラク戦略を発表します。アメリカ国民はベトナム戦争でいくら派遣軍を増員しても事態が好転しなかったことを知っています。そして、米政府が早い段階で失敗を悟りながら、何年も事態を隠蔽し続けたことを知っています。今回の増員に対しても、同じことを感じるでしょう。勝ちにこだわるブッシュ大統領が、「軍事的な勝利」ではなく「大統領の信仰上の勝利」を目指していることを、アメリカ国民の多くは理解しています。そして、こうした宗教的な信念が古い形態の信仰に基づいており、非現実的であることも理解しています。自信が持てない人物はしばしば古い習慣に回帰して安心感を得ようとするものです。ヒトラーが古代のドイツの神を持ち出したのも、多分同じ理由でしょう。古式の習慣は、誰もが反対しにくいので便利なのです。

 ワシントン・ポストが民主党から出る増派反対の声を報じています。ハリー・M・リード上院議員ナンシー・ペロシ下院議長が、ブッシュ大統領に書簡を出して内容を公開しました。その中で「兵の増派は、さらにアメリカ人を危険にさらし、我が軍を戦略的な利益がなくなる限界点まで引き延ばすだけです。イラクに増派するよりも、進むべき道は4〜6ヶ月内に我が軍を配置転換し、その任務を戦闘から訓練、兵站、部隊の防御、対テロへとシフトすることだと、我々は信じます。」と述べています。これが現実的な対応でしょう。早くイラクから足を抜いて、対テロに関する国際的な枠組みを構築することに努力を移行すべきです。昨日も書きましたが、この書簡がブッシュの決定を覆すことはないでしょう。

 思えば、ブッシュが「テロリズムに対する世界的規模の戦争」と言った瞬間に、この戦いは焦点を失ったのです。今さら看板を掛け替えることもできないブッシュには、事態を完全に収拾することはできないでしょう。対テロ政策の出遅れは、次の大統領が就任するまで続きます。それでも対応が間に合えばよいのですが、事態は思わぬ方向へ悪化するものだから、とても心配です。それ以上に、こういうアメリカに対して何の意見も示そうとしない日本の政治家も心配です。日本政府から、現状を憂慮する声を聞いたことがありません。

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