トルコ軍は待機中なれど…

2007.10.15



 今週、トルコがイラク北部のPKKキャンプを攻撃するかも知れません。しかし、military.comはトルコが直ちに侵攻する証拠はないという米当局の見解を伝えています。

 現在、トルコは国境付近に60,000人の兵士を配置しています。しかし、金曜日の時点で、国境沿いに兵士を集結させている証拠はない、と匿名を条件に米軍当局者が述べたとのことです。トルコ軍の兵数は異常ではなく、PKKがある種の警告を受け取るのは間違いないと述べました。

 これはどういう事かというと、偵察衛星で確認したトルコ軍の部隊配置から推測しているのです。トルコ軍は国境近くで待機している状態で、車両は部隊ごとに固まって駐車しており、兵士はテント内にいるということです。これが侵攻間近になれば、車両が道路沿いに並び、命令があればイラク国内に向けて進撃する態勢をとります。ただ、こうした態勢転換はごく短い時間に完了するので、金曜日の状態は戦いが遠いことを意味しません。トルコ議会に攻撃の承認を求めるのは、実は今週なのです。だから、承認がおり次第、トルコ軍は進撃を始めるはずです。

 TurkishPressによると、金曜日にもトルコ軍人1名が殺され、民間人2名が負傷した爆破事件が起きています。米軍当局者の楽観的な見解と違い、PKK幹部は「この攻撃は罰を受けることになる。トルコ軍の攻撃は何も成し遂げない」と述べています。

 なお、先日の記事で「砲兵隊」と紹介した部隊は、この記事に迫撃砲部隊と書かれていることから、榴弾砲部隊ではないことが分かりました。砲兵隊を意味する「artillery」は、砲兵隊全体を指し、迫撃砲部隊をも含むのです。日本語では砲兵隊というと、普通は榴弾砲を装備する部隊のことで、自衛隊では「特科部隊」です。迫撃砲部隊なら連隊付きの「重迫撃砲中隊」、榴弾砲部隊なら師団付きの「特科連隊」と別れています。英語では両者が混然としていて、迫撃砲部隊が砲兵隊と書かれることがあります。この米軍当局者は、この攻撃には迫撃砲と空爆が伴うとも言っています。国境周辺に迫撃砲部隊が配置されており、トルコ空軍が空爆の準備をしていることが分かっているということです。大口径の迫撃砲は榴弾砲並みの射程を持ちますが、弾が先込めなので砲弾の重量が軽いために、一般的には榴弾砲よりは短射程です。これはトルコ軍がイラク領土の奥深くまで侵入するつもりがないことの現れです。トルコ軍は着々と準備をしていると見るべきで、すでに砲爆撃を観測する部隊を出発させ、山中に潜ませていることでしょう。仮に議会が承認しなかったら、そっと部隊を引き揚げればよいのですから。


ミニ・アンケート実施中

無料アクセス解析

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.