対テロ新法の骨子が公開される

2007.10.18



 対テロ新法法案の骨子が発表されました。今のところ、新聞に載った要旨しか目にしていません。閣議で承認した段階で、法案の全文を公表して欲しいものだと思います。法案要旨から、気になるところをあげてみます。

提供できるのは、水と燃料(艦船と艦船に搭載する回転翼機の燃料に限る)。

 新法では、水と燃料の提供だけに限ったのですが、その燃料の提供に関して疑問が次々と明らかになっています。交換公文からは、燃料の必要量や用途が分かるが、実際に何に使われたのかを完全に掌握することはできないと、石破防衛大臣は認めざるを得ませんでした。しかも、海自の航海日誌が破棄されていた問題もあり、内閣や議会が完全に検証できないという問題を露呈してしまったのです。野党がここを攻撃してくるのは必至です。先に指摘したように、港で給油できたはずの艦船にまで給油する方針は、今後も続くのでしょう。

海上阻止活動に使う物品を無償で貸与、譲与できる。

 これは、水と燃料の提供に限定するという法律の主旨からして、武器弾薬類などの戦闘に使う物品は対象とならないと判断されます。可否を決定するのは防衛大臣となっていますので、石破大臣が判断することになるのでしょう。しかし、各艦船は必要な物資を積み込んでいるはずであり、よほどのことがない限り、この条文が必要になることはないでしょう。

活動範囲はインド洋とペルシャ湾、当事国の同意があればその他の領海内も可能。非戦闘地域に限る。

 これまでは、ほぼ全世界で実施可能だったのを限定したわけですが、実質的に変化はおこりません。また、当事国の了解さえあれば、その領海内での活動も可能なので、依然としてアフガニスタンから武器・麻薬、テロリストアが出入りするのを防ぐだけでなく、世界各地で活動できると考えてよいでしょう。テロ組織が遠洋に出ることはほどんどありません。テロ組織が海軍相手に戦闘を仕掛けるわけはなく、非戦闘地域との規定はほとんど無意味です。

武器使用は自衛官個人の判断で正当防衛に限り許される。上官がその場にいる場合は、その命令による。

 これは、特に定めがなくても軍隊は自己を守るために戦闘行為ができることを無視した条文です。過去、自衛隊を海外に出すために作った条文が未だに残されているのです。それに、これは陸上部隊を対象にした条文であり、海軍作戦にはまったく不向きです。海軍は艦船単位で船長の指揮下にあり、その攻撃は完全に統制されています。陸上部隊の兵士は敵を発見した段階で、自分で判断して攻撃を始めることがありますが、海軍の艦艇はレーダーやソナーで敵情報を収集し、艦長の判断で攻撃が下令されます。従って「現場に上官がいる場合は、その命令によらなければならない。ただし生命、身体に対する侵害または危機が切迫し、その命令を受けるいとまがないときはこの限りではない。」という条文は無意味です。これはむしろ、戦闘という言葉を使わずに自衛隊を海外に派遣するのに利用されている感もあります。

 私には、新法は今後も意味のない給油を続けることだとしか見えません。自分が海上自衛官でこの任務に従事し、負傷したら、さぞ後悔するだろうと思います。いまや対テロ作戦は、参加することが名誉といった感があり、どの国も国際的にテロを根絶する戦略から目を背けている感じがします。過去においても、テロに対する正規軍の成績は芳しくありません。一番の妙薬はテロが発生する原因を断つことです。それには、イスラム教国の協力をもっと強化する必要があると考えられます。



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