military.comによれば、先月のテロ事件による被害が過去最低になりました。9月の米兵の死者は、2006年7月以来最低の64人でした。同じ期間の民間人の死者も8月に比べると53.3%の減少と劇的で、米軍はこの成果を称賛しました。
イラク人の死者数
|
民間人
|
警察・軍
|
合計
|
情報源
|
8月 |
1,809
|
155
|
1,964
|
AP通信
|
9月 |
844
|
78
|
922
|
イラク政府
|
イラク全土のテロ事件が減るのは治安回復の兆しと、私は考えています。しかし、今回の急激な減少には相当の理由が見当たらず、疑問を感じます。マハディ軍が休戦しているのが影響しているかも知れませんし、他の軍も再編成などで休戦している可能性があるからです。記事はこうした分析を一切していません。
そこで、globalsecurity.orgの米軍の戦死者のデータを集計してみました。集計方法が違うので、このサイトでは9月の戦死者は60人になっていますが、傾向を見る分には十分使えます。
9月にテロ事件が減ったのは、アンバル州の事件が半減したことに加えて、8月にはヘリコプターと航空機の墜落事故で大きな被害を出しており、同種の事故が9月にはなかったことが大きな理由であることが分かりました。分かりやすいように、下の一覧表では戦闘による死亡と、戦闘と関係のない死を色分けしました。
マハディ軍が活動しているサドルシティがあるバグダッドのテロ事件は僅かしか減っておらず、同軍の活動停止は大きな影響は及ぼしていませんでした。アンバル州では事件は減りましたが、ディヤラ州では増えています。
主要な攻撃方法であるIEDによる攻撃は僅かしか減っておらず、EFPは増えています。なお、爆発という項目は詳細が不明な爆死を示しており、これらにはIEDやEFPが含まれる可能性があります。IEDなどの爆発物による攻撃が減っていないのは、テロ組織の活動が減ったとは考えられないといわざるを得ません。これが今後も継続する保証はなく、今月また数字が増加したとしてもおかしくないと考えます。
残念ながら、この分析からイラク人の死者が減った理由は分かりません。しかし、米軍に対する攻撃の傾向がさほど変わっていないのだから、イラク人に対する攻撃も大きな変化はないと推測することができます。これはテロ事件のいつもの自然の増減の一環だと考えられます。敵の動きを見誤るのは軍事の最も大きな誤りですから、ここは慎重に受け止めるべきです。