ワシントン・ポストが、ロバート・ゲーツ国防長官が「トルコ軍は差し迫ってイラク国内を攻撃しないだろう」と述べたと報じたのと、ほぼ同じ頃、国境地帯でトルコ軍とPKKが交戦し、死傷者が出ました。
しかし、同紙の報道によれば、この攻撃はトルコ軍が主導したわけではないようです。クルド人武装勢力はイラク国境から3マイル未満の場所でトルコ軍の輸送部隊を攻撃し、12人が死亡しました。トルコ軍はこの攻撃に応えて、イラク領内を砲撃しました。
トルコ軍への攻撃は、ハッカリ州(Hakkari province)のダグリカ村(Daglica)の近くで起こりました。推定200人の武装勢力が、トルコ軍歩兵中隊を攻撃した最中に起こりました。武装勢力は輸送部隊が橋に差し掛かった時に橋を爆破したのです。
トルコ議会が承認を与えた後、トルコ軍は暴走勢力の拠点63カ所(イラク領内かどうかは非公開)を砲撃し、ヘリコプターに支援されたトルコ軍兵士が武装勢力を追跡しています。すでに、武装勢力32人を殺害しました。PKKは大勢のトルコ兵を捕虜にしたと主張しています。テレビ局のNTVによれば、すでに8人の兵士が行方不明ということです。
トルコ軍は反撃のために、国境から20マイル離れたアマディヤ地区(the Amadiyah area)にあるマティーン山脈(the Mateen mountain)に、15発の砲弾を撃ち込みました。
これはもう「トルコ=クルド戦争」と呼ぶべき戦争状態です。ゲーツ国防長官は事態を大きく見せたくないので嘘をついているのです。報道の内容からして、これらの動きをアメリカが察知できないわけはありません。偵察衛星や無線傍受などにより、容易に確認できることです。トルコ軍は山中での掃討作戦を開始しており、トルコ軍にPKKは損害を与えながらイラク領内へ退却を開始しています。このまま進めば、トルコ軍はイラク領内に侵入するでしょう。PKKは細く延びた補給線を脅かしてトルコ軍の活動を妨害し、トルコ軍はヘリコプターによる輸送・警戒で対抗します。こうした動きに対して、アメリカはほとんど介入する余地を持ちません。すべてはトルコ軍の進撃の成功次第です。