イラク軍・警察の整備は未だに軌道に乗っていないようです。それらを示す記事がいくつか報じられました。
米軍からの武器の支給が遅れているため、イラク政府が中国から1億ドル分の武器を買いつけたとmilitary.comが報じました。これについて、ロバート・ゲーツ国防長官は、海外武器販売プログラムが緊急、短期間の供給向けに計画されていないためだと述べています。武器が不足するのは、横流しがあるためでもあります。
ブラックウォーター社の問題では米議会で進展がありましたが、ホワイトハウスの反対で無に帰すかも知れないと、ワシントン・ポストが報じました。米下院は政府契約人にアメリカの司法権が及ぶ法律を可決しました。上院もこの法案を可決する見込みですが、ホワイトハウスはこれが別の新しい問題を生むと主張しています。記事には、酒に酔ったBW社の社員が、クリスマスイブのパーティの帰り道で、イラクの副大統領の警備員を銃で撃った事件が書かれています。この社員は罰金を払い、アメリカに戻され、解雇されましたが、起訴されていません。おそらく、ブッシュ大統領はこの法律を拒否します。法律を成立させれば、事件が起きるたびにFBIがイラクで捜査を行い、アメリカ人がアメリカ人を起訴することになりかねません。GHQ時代に「オール・ザ・キングズメン」という州知事の汚職をテーマにしたアメリカ映画が上映禁止となったことがありました。アメリカで汚職が蔓延していると日本人が考えると、占領統治に支障が出るという判断でした。今から見ると普通の政治ドラマでも、当時は危険視されたのです。民間軍事会社の社員が起訴されるようになれば、これ以上の問題になるのは当然です。
ワシントン・ポストによれば、イラクの元裁判官で、2004年にアメリカが設置した情報公開委員会の指導者ラドヒ・ハムザ・アルラドヒ(Radhi Hamza al - Radhi)が、イラク政府内に汚職が蔓延しており、過去3年間に180億ドルが無駄になったと米議会で証言しました。また、同委員会のメンバー31人、その家族12人が暗殺されたと述べました。あるメンバーは妊娠7ヶ月の妻と共に射殺され、アルラドヒの警備主任の父親は肉を吊すフックに吊されて殺されました。共和党の一部の議員がアルラドヒの証言をひっくり返そうとして、こうした汚職はフセイン政権の遺産だと主張しました。さらに、アルラドヒが1979〜1992年までフセイン政権下の検察官であったことを暴きました。アルラドヒは、自分は少年少女や孤児のための基金を管理し、軽犯罪の検察官だったと答えました。こうしたイメージを傷つける議会戦術はよく使われることです。しかし、アメリカがフセイン政権を便利に使っていた時期もあり、その時代の検察官だったことを指摘するのは、天に唾するようなものです。問題は、現在のイラク政府に汚職が蔓延し、それを解消しがたいことです。賄賂は地位の高い者に頼み事をする時の礼儀みたいなもので、これは陸上自衛隊がサマワに駐屯した時に、お土産攻撃を使ったことからも明らかです。アメリカは、こうした政府を「テロとの戦いにおける有力な同士」と言い続けなければなりません。しかし、日本の国会では、こうしたことが一度も議論されていないのだから、なお悪いのかも知れません。