military.comによれば、増派で増えた米軍部隊が撤退を始めました。これから順次長い時間をかけて増派部隊は帰還します。
現在20個の戦闘旅団は、第1騎兵師団第3旅団がディヤラ州を去ると、19個に減ります。来年1月から7月のスケジュールは公表されていませんが、完了時点で15個旅団に縮小される予定です。人数で見ると、167,000人が140,000から145,000人まで減ります。記事は、その時に増派の効果が永続的な成果かどうかが明らかになると書いています。
米軍人の間には色々な意見があるようです。スティーブン・グレドヒル准将は、イラク軍はすでに準備を終え、経験、能力を増すことで、バグダッドだけでなく全土で活動できるようになると述べました。カーター・ハム中将は、イラク軍が準備を整える前に撤退するのは非常に危険だと述べました。軍人の間でも状況の評価には差があるのです。
記事が主張するとおり、この撤退の様子はよく見守る必要があります。このままイラク国内のテロが終息するのなら、テロ戦争はイラク以外の地域へ移る新しい段階に入ったということです。しかし、外から見ている限り、そうなる理由はないように思われますし、アルカイダがそうした方針転換を決めたという証拠もありません。だから、テロ事件が再び多発する恐れは十分にあります。そうなると、増派部隊の撤退がストップするかも知れません。そうなると、いよいよイラクは泥沼に陥ります。私はその可能性の方が高いと考えています。
ところで、トルコ軍のヘリコプターがイラク領内のザクホ村(Zakhu)を攻撃したという報道があります。今朝のNHKニュースはイラク側がこれを否定したとだけ報じましたが、military.comはさらに詳細を報じています。それによれば、空爆が行われたのは間違いないようです。空爆を否定したのは、正確にはクルド自治政府の広報官で、投下されたのは照明弾だけだと主張しています。しかし、イラク陸軍の国境警備隊は空爆が行われたと主張し、PKKもそれを確認したと声明しました。目撃者の羊飼いによれば、空爆は30分間続き、TNT火薬の臭いがしたということです。放棄された村だったので、死傷者は出ませんでした。さらに、この空爆の数時間後にトルコ南東部のディヤルバクル(Diyarbakir)の空軍基地から、少なくとも2機のヘリコプターを含んだ軍用機がどこかへ向けて離陸するのが確認されています。この基地は先月末から国境地帯の空爆の基地として機能していることが分かっています。今回確認された村以外にも、空爆された場所があるかも知れません。
今のところ、こうした爆撃はPKKに圧力を加えるために行われていると考えられます。ザクホ村も住人がいないことを確認した上で爆撃したのかも知れません。こうして、先にゲリラが逃げ込める場所を潰してから、本格的な掃討作戦を行うのでしょう。これはトルコ軍の隊員を戦闘に慣らすためにも有効です。こうした空爆はもうしばらく続くかも知れません。NHKニュースに欠けているのは、的確な状勢判断です。単に戦闘が迫っていることを知らせるだけなら、情報としての価値はほとんどありません。その内容を検討し、戦争の準備がどこまで進んでいるのかをできるだけ詳しく把握することが大事なのです。