onlineで定期購読の申し込み!

代表的ニュース週刊誌
Time(英語版)

総合的国際情報誌
フォーサイト

歴史ファンなら…
歴史街道

航空自衛隊なら
Jウイング

海上自衛隊なら
Jシップス

陸戦用車両なら
PANZER

ソマリアが混迷の極致へ

2007.11.28



 ソマリアが絶望的な状況となりました。ワシントン・ポストが国連軍の介入が功を奏していないことを報じています。

 スーダン軍がイスラム武装勢力に対する攻撃を続けていますが、状況は好転していません。状況はダルフールよりも悪化しており、国連はいかなる救済も無理と判断しています。来年早々に19,000人の兵士が増員される見込みとなっており、それに希望が持たれています。本当にこれだけの兵士が増員されるのかは、私には疑問です。スーダン軍が派遣されるまでにも紆余曲折がありました。

 何十万人もの人びとがモガディシュから逃げ出し、道路沿いにキャンプを設置していますが、食糧は僅かしかありません。作物の収穫に失敗したため、飢餓が起きています。モガディシュ市内では日常的に爆撃と待ち伏せ攻撃が行われ、時折、全面的な戦闘が発生し、今月の1週間で80人が殺害されました。何百人もが船で逃れようとして溺死しました。当初、ソマリアに介入したエチオピア軍はソマリア国民の支持を得られませんでした。エチオピア軍は装勢力の拠点の周囲を砲撃してソマリア国民を巻き添えにしています。

 当サイトでは、ソマリア状勢について当初から注目し、放置すればアルカイダの新しい拠点になると警告してきましたが、ワシントン・ポストも同じことを書いています。「未だに、国際的な介入のための意志と資源は存在しないように見える」。なぜイスラム法廷連合が銃弾や迫撃砲を大量に持っているのが気になります。ソマリアの沖合は洋上監視活動で封鎖されているのではなかったでしょうか。そうした活動のために海上自衛隊の補給艦が燃料を補給し、給油を受けた艦船がソマリア周辺の沖合に行っていたことも確認されています。弾薬は空路など、海路を使わずに運搬されているのです。抜け穴はいくらでもあるのです。

 インド洋での給油活動など、ソマリアの救済に比べれば重要ではありません。洋上給油にこだわるのは、アメリカの言うことに従ってさえいれば問題はないと信じ込んでいるためで、自分で国際平和を構築しようという意思のないことの表れです。アメリカはソマリアにまで介入している余裕はありません。だから、日本も何も言わないのです。これまでアメリカがソマリアに行ったのは、エチオピア軍を支援するための空爆と、特定のテロリストの死亡を確認するための小規模な地上軍の投入、海軍艦船による船舶の監視だけです。これだけでは、イスラム法廷連合を壊滅することはできません。これがテロとの戦いの重要なポイントで、一点に大きな賭けをするのではなく、小規模な戦いを細かく続けて、少しずつ活動を封じていくのが肝心なのです。テロ組織は自由に動き回り、活動します。こちらも自由に動けるようにする必要があります。イラクやアフガニスタンに重装備の部隊を送り、根を張らせるのは間違いです。

 先週、ソマリア首相に同国の赤新月社で人道主義活動を行ってきたヌア・ハッサン・フセイン(Nur Hassan Hussein)が任命されましたが、彼が最後のチャンスかも知れないと記事は書いています。

 ソマリアの窮状を考えると、与党が新テロ法案や防衛省の贈賄事件で頭を悩ませていることなど、どうでもよいことだと分かります。いたずらに危機感だけを煽り、政府の方針に国民を従わせようとしても、国民の目には嘘が透けて見えています。来年の洞爺湖サミットに向けて、テロに関する様々な対策が行われます。これに対する周囲の人たちの反応に注目すれば、面白い発見があることでしょう。テロの危険を鵜呑みにする人たちとまったく関心のない人たちの反応の違いは興味深いはずです。イギリスで行われた地下鉄爆破事件が引き合いに出され、サミットを狙ったテロ事件の危険が強調されるのは容易に予想できます。しかし、この事件の犯人たちはイギリスで生まれた者たちでした。最も年長のカーンが1974年の生まれで、あとの3人は1982年、1985年、1986年生まれです。3人はパキスタン系イギリス人の第2世代で、1人はジャマイカ出身した。日本でこれに近い立場の人たちは、いたとしてもごく少数でしょう。こうした人たちは日本国内の事情にも通じ、爆薬を手に入れるのに成功するかも知れません。しかし、国外の人間が爆発物を大量に手に入れるのは困難です。サミットにからむテロ事件の心配は対して大きくありません。むしろ、それに伴って行われる取り締まりに注意する必要があります。ポケットナイフを持っていても軽犯罪法で検挙できるので、警官たちはアクセサリー代わりにポケットナイフをぶら下げている者でも逮捕します。馬鹿馬鹿しい騒動に巻き込まれないように注意することです。我々にある危険はこの程度だろうと考えられます。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.