military.comによれば、3月に退役したジョン・アビザイド大将(Gen. John Abizaid)がカーネギー・メロン大学での講演で、イラク戦争は半世紀続くかも知れないと発言しました。アビザイド大将はイラクに駐留する米軍の総司令官を務めていましたが、現在はスタンフォード大学にあるフーバー研究所にいます。
またしても退役将校のぼやきを聞くことになりました。「まもなくイラクに駐留する米軍を一部撤退させられるかも知れない」といった類の発言を繰り返したアビザイド大将が戦いは半世紀続くと言うのです。その発言の全体を眺めてみましょう。
いずれ、我々は軍隊の戦闘の負担を、我が軍から直接地域の軍隊へ切り替え、間接的な役割を演じるように切り替える必要があります。しかし、ほんの少しでも、これから25年から50年で米軍が帰還して、くつろいで気楽にやれるかもしれないと考えるべきではありません。なぜなら、この地域の戦略的な状況はそれが可能だと示しているようには見えないからです。
スンニ派過激派の増加、シーア派過激派の急成長、アラブとイスラエルの対立、世界経済の中東の石油への依存心は、アメリカ人を長い間中東地域に止めるでしょう。
私はこの戦争が石油のための戦争だとは言っていません。しかし、私は石油燃料は、政治権力がそれらを手に入れようとするという極めて大きな地政学的な動きをたきつけます。そして、アメリカ合衆国の中の私たちが、長い目で見れば、外国製のエネルギーへの我々の依存心を減らす方法を考えることは絶対的に不可欠です。
アメリカは、紛争が軍事的問題から政治的問題へ移行できるように、経済的、政治的、外交的手段の調整をもっと上手にやる必要があります。
私は、我々が現在行っていることは、軍隊が80パーセントで、外交、経済、政治、教育、情報、諜報などを20パーセントだと特徴づけるでしょう。この均衡を認め、変えなければなりません。80パーセントそれら他の事柄にするのです。
さらに、記事にはこう書かれています。9月のインタビューでは、アビザイド大将はイラク政府が自分で機能するまで十分に安定するには3〜5年かかると述べていました。軍隊の損耗にもかかわらず、演説ではプロの軍を維持することは重要だと述べましたが、その構想は示しませんでした。
ここまで無責任だと、もはや言うべきこともありません。戦争が長期戦でうまく行くことがないのは、孫子の時代から言い続けられていることです。25〜50年、3〜5年という数字には何の根拠もありません。要するに、見通しがつかないことを別の言葉で言っているだけです。彼が戦争を続けるべきだというのは、それが軍隊には利益をもたらすからです。将官が戦場に行くことはまずありません。戦争を続ければ、退役後も様々な形で軍に関与するチャンスが生まれます。テロ対策用のナントカ兵器の開発で、軍需産業と仕事をするチャンスができるかも知れません。戦争が続く限り、彼らの意見は重用され、その立場を強めるということを、彼らは過去の経験からよく知っているのです。最前線の下級兵士たちの奮戦を理由に戦争継続を訴える手法はすでに古典的ですが、同じ軍隊でも下級兵士と将官とでは、その立場が天と地ほど違うことを忘れるべきではありません。アビザイド大将の発言は、戦争で毎度繰り返される宣伝文句の繰り返しに過ぎません。日本政府も、最近、この種の発言が非常に多くなっています。ここまで書いて、石破茂防衛大臣が自著「国防」の中で、この戦争は100年続くかも知れないと書いていることを思い出しました。いまさら驚くにはあたらないのかも知れません。
もうひとつ、イラク戦争に関する虚偽について紹介しておきます。アメリカのテレビ番組「60 Minutes」によると、イラクに可動型の細菌兵器研究施設があると証言したイラク人、ラフィド・アハメド・アルワン(Rafid Ahmed Alwan)は、化学を学んだことがあるものの成績が悪く、化学兵器を扱ったことはないといいます。カーブボールという暗号名をもらったアルワンの主張があてにならないことは、ドイツの情報機関からアメリカに警告されたものの、取り上げられることはありませんでした。日曜日に放送される「60 Minutes」で、このことが取り上げられるとmilitary.com報じています。