military.comによれば、トルコ兵は越境作戦の準備を整え、攻撃命令を待っています。しかし、冬が近づいていることと、アメリカからの圧力のため、限定的な攻撃と空襲に限定されると見込まれています。
トルコ軍は、F-16によるPKK拠点への空襲、ヘリコプターによる空襲、特殊部隊作戦を検討しています。匿名で語った政府高官によれば、この地域は地雷だらけで、大軍での作戦は問題外です。それでも数千人程度の越境作戦はあるだろうということです。そして、心配されたことがやはり起きていました。PKKは兵士をイラク、イラン、トルコに分散して、待避させています。正面対決を避け、トルコを戦争で疲弊させる方針なのです。イラク北部では当然、越境してきたトルコ軍とも戦いますが、損害を一定以下に抑えるつもりなのです。そうすることで、トルコに自分たちの優位性を見せつけ、政治的目的を達成しやすくするわけです。
なんだか、予想以上に予想通りになってきました。この調子なら先が読みやすくて楽です。今回の作戦の問題は、テロ攻撃の激化により戦争に踏み切ったものの、気候に関する検討を忘れ、十分な作戦が展開できなくなったということです。これは孫子に気象の重要性が説かれているのを無視した典型例と言えそうです。さらに言えば、テロを理由に戦端を開くことの愚かさに対する考察の欠如が見えます。いわゆる「おっとり刀」で戦争をしてはいけないのです。テロで大勢の兵士が死に、国民の間に「これ以上、テロリストに兵士を殺させるな」という声が高まると、政府はそれを無視することはできないものなのです。そこで対テロ戦争を始めるのは、国家の個別的自衛権の範疇であり、その選択肢を否定することはできません。ですが、それ以上に、その戦いに勝てるのかを冷静に判断し、いつ、どのように開戦するのかを決めなければならないのです。トルコは成り行きから、泥縄式に開戦を決意したものの、冬とアメリカの圧力という障害に出足を挫かれてしまいました。腰を上げてから作戦の問題に気がつき、それでも止められないというのが戦争の悪いパターンの典型です。トルコにとって、この戦争の先行きはよいものではありません。