当サイトで、7月にM4自動小銃の装弾不良が問題視され、実射テストが実施されることを紹介しました(記事はこちら)。その結果がmilitary.comに報じられました。
テストはメリーランド州にある陸軍アバディーン試験場にある埃だらけの室内で、10丁のM4とその他の自動小銃を6,000発射撃して行われました。M4には、回復するのに10秒以内で済む「クラス1」と呼ばれる軽微な装弾不良が863回、回復するのにそれ以上かかり、修復に兵器係が必要な「クラス2」と呼ばれる装弾不良が119回発生しました。
H&K社のXM8が最もよい成績を出し、クラス1と呼ばれる十秒以内に回復できる装弾不良が116回、クラス2と呼ばれる回復に十秒以上かかる重大な装弾不良が11回発生しました。FNH社のMk16は総計で226回、H&K社のHK 416は233回でした。
この結果は未だ分析中ですが、マーク・ブラウン准将(Brig. Gen. Mark Brown)はこれを良好と評価し、M4は総計で60,000発の内、98%を正常に発射したと述べました。しかし、単純に考えても、M4の成績は他よりもずっと悪いわけで、98%という数字には説得力はありません。最初にこの記事を読んだ時はまったく意味が分かりませんでした。
米議会からもすでに疑問の声が出ています。M4の弾倉には約30発の弾丸が装填されています。882回というM4の平均値は68発ごとに装弾不良が起こることを意味します。比べると、M8は472発ごとに、Mk16は256発ごとに、HK 416は257発ごとに装弾不良を起こします。この結果は衝撃的だという声があがっているのです。しかし、陸軍はこの比較は誤解を招く恐れがあると反論します。埃をつけて射撃するテストは、典型的な戦闘の環境いとは違い、兵士が戦場で行うクリーニングをしていないというのです。陸軍は兵士が戦闘中に140発よりも多く発砲することは希だとも言います。
それなら適正にクリーニングした銃でのテストもやってみたらと、私は考えます。M4がしばしば装弾不良を起こすという話は過去からずっと聞かされ続けている話です。イラクで捕虜になったジェシカ・リンチの小銃(M4ではないかも知れませんが、同種の銃です)の銃も、敵に周囲を囲まれた状態で装弾不良になり、近くにいた下士官でも修復できませんでした。いざという時に弾が詰まる小銃では兵士の不安は解消できないでしょう。軍用の小銃はマスプロ教育によって、一定水準の結果が得られるように設計されるべきです。一部の達人だけが使いこなせる銃は軍隊には必要がありません。現用の武器に固執する軍人の性質が今回も発揮されているような気がします。結論ありきで、テストの結果をねじ曲げているように思われます。あるいは、アメリカにも守屋元次官のような人物がいるのかも知れません。アメリカの銃器産業は景気が悪く、軍の発注をもらえないと倒産してしまうとも言われます。そのために、どうしても国内メーカーにやらせたいという空気があるのかも知れません。