増派規模は実質2倍。米議会予算局が指摘

2007.2.2



 military.comによれば、議会予算局(CBO)が21,500人のイラク増派は、実質的に最大48,000人にのぼる可能性を指摘しました。

 これまで言われてきた21,500人という数字には、後方支援部隊が含まれておらず、司令部要員(憲兵、通信、契約業務、工兵、情報、医療、その他)を含めると、最大で48,000人程度になるというのです。ここ数年間、国防総省は戦闘旅団9,500人の内訳を4,000人の戦闘要員と5,500人の支援要員としてきましたが、今回発表された増派数に支援要員は含まれていないと言うのです。CBOはそこから予想される予算額を試算し、報告書(pdfファイル)で次のようにまとめています。

会計年度ごとの費用見積もり(10億ドル単位)
 
2007
2008
2009
07〜09
合計
4ヶ月間の派遣
 48,000人の増派
  戦闘要員20,000人
  支援要員28,000人
9
3
*
13
 35,000人の増派
  戦闘要員20,000人
  支援要員15,000人
7
2
*
9
24ヶ月間の派遣
 48,000人の増派
  戦闘要員20,000人
  支援要員28,000人
10
15
3
27
 35,000人の増派
  戦闘要員20,000人
  支援要員15,000人
7
11
2
20

 注: * = $5億ドル以下.
 想定は3ヶ月間の派遣作業と3ヶ月間の撤退作業を含んでいます。


 数年来の慣習を変え、派遣規模を小さくみせるために支援要員の数を外すとは、国防総省はよほど神経質になっているようです。これで増派の分析をやり直す必要が出てきました。支援要員を含めて21,500人ではないのですから、戦力はこれまでの想定の2倍程度ということになります。しかし、それを前提としても、治安の回復は難しいでしょう。当初、米陸軍は50万人以上を派遣しないとイラク侵攻は難しいと見積もっていました。今回の増派でもその半分に満たない数字にしかなりません。野戦軍を撃破する戦闘ではないため、派遣軍の活動の大半は無駄になり、損耗も招きます。イラク警察の訓練がうまく行っていないという情報もあります。現にここ数日間のテロ攻撃は激化しており、武装勢力の戦力が強化されていることが分かります。

 参考までに、2003年12月に発表された「Bounding The Global War On Terrorism」で、1ヶ月あたりのイラク駐留米軍の費用は40億ドルで、年間では480億ドルとしていたことをあげておきます。

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