NIEがイラク状勢分析の要旨を公表

2007.2.3



 ワシントン・ポストによれば、国家情報評価(National Intelligence Estimate: NIE)が今後のイラクの状勢を分析しました。この報告書は90ページありますが、機密に指定されています。しかし、9ページの要約(pdfファイル)だけが公開されています。こうした情報公開のやり方は日本も導入すべきものです。

 NHKが要旨を報じていますが、はっきり言って中途半端な要約で、これを聞いて意味が分かる人はほとんどいないでしょう。どうして日本の報道機関は、こうした報告書類を報道する場合、その主旨を分散させ、意味不明のものにしてしまうのかが分かりません。この要旨は最後に書かれている3つの岐路にすべてが集約されており、それよりも前の部分はこのサイトでも紹介してきたイラクの状勢の説明が書かれているだけです。なぜかNHKはこの結論部分を十分に説明しませんでした。その3つの岐路は次のとおりです。

  • 混乱から分裂へ
     シーア派、スンニ派、クルド人の3派に別れて分裂する。

  • シーア派の台頭
     中央政府が崩壊し、その空洞部分にシーア派の権力が台頭する。

  • 無秩序な権力の分散派閥の対立が終わる見込みはほとんどない。
     各地域に市松模様型に派閥グループが発生する。

 この要旨が言うのは、要するにどの可能性にも希望はないということです。どの場合でも、米軍が派閥抗争に巻き込まれたり、テロ攻撃に遭うのは避けられません。報告書は、すぐ撤退すれば暴力は余計に激化するとも指摘していますが、かと言って駐留しても好転は見込めないことは、これまで述べてきたとおりです。ここに至ってもまだ「勝利」にこだわる大統領がすべての原因なのは言うまでもありません。このような状況に対案がないのは当然で、それを理由に民主党を批判するのは無意味です。こうした状況に追い込まれないように戦略を組み立てるのは戦争指導のイロハであり、それを無視した大統領に問題があるのです。

 この記事からは、昨年8月に発表された米海兵隊の報告書(pdfファイル)もダウンロードできます。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.