6ヶ国協議の結果について

2007.2.13



 今回の6ヶ国協議の結果は、北朝鮮にかなり厳しいものでした。

 まず、北朝鮮が要求した200万トンという法外な重油は半分の100万トンへ減らされました。これでも北朝鮮が手を打ったのは、彼らがかなり厳しい状況に置かれていることを意味します。100万トンという数字は北朝鮮が1年間に使用する重油の量です。1年分の重油と交換に核廃棄をするのが、北朝鮮にとって損なのか徳なのか。彼らはどう考えるのでしょうか。核兵器への転用ができない軽水炉型原子力発電所の話は決まりませんでしたし、それが完成するまでの重油提供の保証も決まっていません。

 さらに2ヶ月以内に核施設の閉鎖が確認されたら5万トンを提供することになっています。普通なら半数の50万トンがこの段階で提供されるでしょうが、5万トンにされたのは北朝鮮に確実に核施設を閉鎖させるためでしょう。それだけ北朝鮮には信用がないわけです。核施設を完全に解体しないと95万トンの重油は手に入りません。だから、北朝鮮は本気で核廃棄をするしかないところに追い込まれたことになります。しかし、私としては、本当に北朝鮮が核廃棄をするのかまだ信じられない気持ちです。

 GlobalSecurityのチャールズ・ビック氏は、北朝鮮がノドンミサイルに搭載できる核弾頭の開発を完了している可能性があると指摘しています。核爆弾をパキスタンで実験済みで、昨年の実験の結果は起爆に関する装置の実験で、核爆発そのものの実験ではないと分析しています。これが本当だと仮定すると、北朝鮮はこれまでに製造したプルトニウムで少数の核爆弾を完成させている可能性が高いことになります。これは本土防衛用として手元に置くことになります。今回の6ヶ国協議には、完成済みの核爆弾に関する規定はありません。これが分からないのです。北朝鮮に核施設を閉鎖させて、5万トンの重油を渡した時点で改めてこの議論を持ち出して、北朝鮮にだまし討ちを食らわせる予定なのでしょうか。そうだとすると、すごい仕掛けがかけられていることになりますが、何とも分かりません。

 拉致問題は日朝関係を協議する作業部会設置で取り扱うことになりました。拉致問題は切り捨てられたのではなく、今後も北朝鮮に圧力を加え続けます。5万トンの重油提供に日本は関わりませんし、拉致問題で日本が不満足なら、残り95万トンの提供にも参加しないという選択肢があります。政府内部では95万トンの提供には関わらざるを得ないという意見が出ているようですが、これは国内世論の動向如何で変化することになるでしょう。

 北朝鮮がちゃぶ台をひっくり返して、また6ヶ国協議から去る可能性も常にあります。あまり期待しないで様子を見守りたいと思います。

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