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掃討作戦はスンニ派の反発を強めるだけ

2007.3.3



 掃討作戦は「不発」の他に「スンニ派に偏った弾圧」という別の特色が見え始めています。シーア派という目標をほとんど失った米軍とイラク軍はスンニ派を攻撃して成績を上げるしか手がなくなっています。

 ワシントン・ポストによれば、ファルージャ近郊の村で水曜日に午後1時から約6時間戦闘が行われ、50人の武装勢力を殺害、80人を逮捕しました。殺害された武装勢力はスンニ派でした。政府側の勢力はイラク軍、イラク警察および部族の戦士でした。部族の戦士がシーア派とは記事には書かれていませんが、それ以外には考えられません。政府軍のほかに民兵が戦闘に参加しているだから、これは内戦です。政府軍がすでにシーア派の味方をしているのは明白です。これで統一国家イラク建設などうまく行くはずがありません。シーア派にすれば、フセイン政権の残党を一掃したいところでしょうから、民族浄化に近いレベルまで弾圧しようとすると考えなければなりません。アメリカもこういう状況を傍観するしかないのです。

 別の記事には、スンニ派がシーア派の公務員と軍人を誘拐したと書かれています。この誘拐はシーア派主導の警察軍によってスンニ派の女性が強姦されたことへの報復として行われました。誘拐された人たちの写真がウェブサイトに公開され、7人がイラク軍の制服を着ているということです。このように、イラクは血で血を洗う状況になっています。掃討作戦がイラクの治安をもたらす可能性はいよいよ小さくなっています。そして、この闘争がより大きな混乱へ発展していく可能性を考えざるを得ません。アメリカにはそれに対処する戦略はないでしょうし、それは他の国も同じです。

 サドル・シティの掃討作戦はまだ始まっていませんが、まもなく開始され、すべての家屋が捜索される予定です。アメリカのイラク増派はすでに完了しています。これからまったく意味のない軍事行動が行われ、予想されるように大した成果をあげずに終わることになります。それはブッシュ政権の無能を決定的にし、アメリカは次期大統領を誰にして、どうやってイラクから足を引き抜くかに懸命になるでしょう。最大の問題は、本土にできるだけ予備の力を残しながら目の前にある危機に対処し、全力対決は絶対に避けるという戦略の要諦をブッシュ政権が無視ことです。アルカイダはアメリカが全力で戦うような相手ではなく、諜報や特殊作戦だけで対処し、残りの重装備部隊は中東全体や北朝鮮問題など、世界全体を対象とする戦略のために温存すべきだったのです。

 私たちは、アメリカの失敗から、客観的な軍事分析で先を読むということを学ばなければなりません。日本政府は、アメリカに従うことを最優先にして思考停止しています。これは戦前、日本からドイツなどヨーロッパへの留学が多く、アメリカへ留学した人たちが社会の傍流に置かれた失敗を別の形で繰り返しているように思えます。国や地域を限定せず、海外の情報はできるだけ多くに目を通すべきです。

 
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