military.comによると、アグスティン・アグアヨ技術兵(Spt. Agustin Aguayo)が任務放棄で有罪を宣告されましたが、軽い刑罰で済みました。2002年、ブラジル出身のアグアヨ技術兵は生活のために陸軍に志願しました。アグアヨ技術兵は、第1歩兵師団第2旅団戦闘団の一員として、2004年にティクリートで戦闘医療補助員として1年間派遣されました。その後、再びイラクに派遣されるのを拒否し、良心的兵役拒否を申し立てましたが、陸軍は却下しました。そのため彼は脱走し、軍事法廷に起訴されたことを知ると自首して、裁判で脱走したのはイラクに行くのが嫌だったからだと主張しました。
良心的兵役拒否は特別な場合を除いては許可されません。イスラム教徒なので同じイスラム教徒を殺したくないとか、明確な理由がない限り軍は申し出を却下します。そうしないと、誰でも合法的に除隊できるからで、それを防ぐ必要があるからです。そのため、傍目には良心的兵役拒否に見えるケースも却下されています。
彼は最高で禁固7年を宣告される恐れがありましたが、判決は禁固8ヶ月でした。彼はすでに161日間拘留されているので、この日数が差し引かれ、数週間後には釈放される見込みです。このほか、二等兵への降格、給与の没収、懲戒除隊(Bad Conduct Discharge)の処分を受けます。懲罰的な除隊には、懲戒除隊、非名誉除隊(Other Than Honorable Discharge)、不名誉除隊(Dishonorable Discharge)の3種があり、懲戒除隊は退役軍人が得られる利益のほとんど全部を失いますが、不名誉除隊がすべてを失うのに対して若干は残ります。不名誉除隊は殺人や強姦などの重大犯罪に対して科されるので、懲戒除隊は妥当な判決でしょう。
刑期が短いのは、裁判官がアグアヨ技術兵の良心的兵役拒否に理由を認めたためと考えられており、アグアヨ技術兵も寛大な処置に感謝をしています。記事に掲載されている彼の写真を見ると、いい加減なことをするような人物には見えませんから、裁判官はそうした熱意を感じ取ったのかも知れません。アグアヨ技術兵は公判で宗教改革者マルチン・ルターが主張の変更を求められた議会で述べた言葉「Hier stehe ich, Ich kann nicht anders. Gott helfe mir. Amen(ここに私は立つ。これよりほかはどうすることもできない。神よ助けたまえ。アーメン)」を引用し、「Here I stand, I can do no more.」と述べたといいます。この言葉は普通英語では「more」の部分は「other」や「otherwise」と訳されているようですが、「more」と言ったところにアグアヨ技術兵の心情が表れていると言えるかもしれません。